中森明菜Photo:JIJI

最近、1980年代前後の日本の歌謡曲の人気が海外で高まっているという。当時はアイドル全盛期で、人気の双璧といえば松田聖子と中森明菜だった。アイドルの王道を歩んでいた松田聖子に対し、後からデビューした中森明菜はなぜあれほどの人気を勝ち得たのか。(評論家・翻訳家 白川 司)

本音で語る「ルール違反」と
高い歌唱力でトップアイドルに

「ボカロ世代」に伝えたい、今こそ中森明菜を聞くべき理由『少女A』

 中森明菜の人気が沸騰したのは、デビューから2曲目の『少女A』(1982年7月)からだった。

 何度目かのアイドル全盛期時代にあって、中森明菜は当初、歌唱力が高いが、小泉今日子や早見優など華やかなアイドルに比べると地味な存在とみられていた。デビュー当時からいつかはスターになれる逸材とみる向きはあったものの、2曲目で同世代アイドルのトップに立ったことは彼女に注目していた人たちにも意外だったはずだ。

 忘れられない中森明菜のインタビュー記事がある。記者が「『少女A』がヒットして、最優秀新人賞(「日本レコード大賞最優秀新人賞」のこと)がとれると思いますか?」と聞くと、中森明菜はこう答えた。「誰がとるかはもう決まっているから、興味がありません」。