「こんまり」こと近藤麻理恵は、今や世界で最も知られる日本人の一人。彼女の世界進出を手がけてきたプロデューサーであり夫でもある私の書籍『Be Yourself』では誰もが自分らしく生きることを勧めています。今回の対談相手の澤円さんは、2020年夏に独立し、現在は幅広い企業で活躍しています。しかし澤さんが自分らしく生きられるようになったのは、つい最近のことだというのです。(構成:宮本恵理子)

澤円が伝授!「サラリーマン不向きでも自分らしく生きるコツ」澤円さん(写真左)と川原卓巳さん

川原卓巳さん(以下、川原):澤さんは、僕にとって「かっこいい大人」のモデルとなるお一人。先日少しお話を伺ったところ、「自分らしい人生を実現できたのは、結構最近のこと」とおっしゃっていて意外でした。今日はぜひ、澤さんの人生哲学をたっぷりと学ばせてください。

澤円さん(以下、澤):こちらこそ、卓巳さんとの対話を楽しみにしていました。僕は2020年の8月末に23年勤めていた会社を辞めましてやっと気づいたんです。サラリーマン、向いていなかったんだと(笑)

川原:だいぶ時間がかかっちゃいましたね(笑)

:遅いでしょ? でもね、だからといって「会社員時代の時間がムダだった」と後悔しているかというと、全然そうじゃないんです。

 向いていないことをやっていたけれど、まったく自分らしく生きられなかったわけじゃなかった。つまり、自分らしさの実現はゼロか100か、ではないんです。一部は向いていなくても、ほかのどこかでは自分らしさを発揮している部分もあった。

 何でもそうですが、「100%完璧な世界をつくろう」と思うと呪縛になっちゃいますよね。手始めに、「○○だけど△△」みたいなギャップをつくってみることから試してみると、ラクに生きられるようになると思うんですよ。例えば「サラリーマンだけど長髪」とか「経理なのにダンサー」とかね。

川原:「こんまりの夫なのに変顔」とか?

:そうそう(笑)。卓巳さんの会社員時代はどうでしたか?

川原:前職の会社には、本当によく育てていただいた恩義があります。でも、僕は会社が決めたルールを守って仕事をするのが本当に苦手で。マニュアル通りに営業することを求められていたのですが、どうしても僕はちゃんと相手と会話しないとうまく話せなかった。

 それで、一人ひとりに合わせて対応していると、「それやっちゃダメ」と言われて。でも、それしかできなくて。だから、そのうち上司に見つからないように、非常階段に隠れてケータイでアポを取るようになっていました。

「通信料が高い!」と怒られてオフィスに連れ戻されたので、固定電話をかけるふりをしながら、手元でメールを打ってお客さんと連絡を取るという特殊技術を身につけました。

:すごい。

川原:おかげで、マルチタスク能力が磨かれました(笑)。今も(動画配信サービス)「Netflix」の新作撮影を含めて、40くらいのプロジェクトを同時に走らせているのですが、なんとかこなせているのは、この時鍛えたスキルがあったから。

 とはいえ、当時は自分らしさを曲げている状態がずっとつらくて、成果もなかなか出ないでいました。本来の自分らしい能力が発揮しやすい方法ができず、それ以外の方法でなんとか頑張ろうとしていたので、今、思えば結構ハードでした。

:その経験によって、相当筋肉はついたはずですよね。100メートル走を速く走るためには、スプリント練習さえすればいいわけではありません。

 いろんな筋肉をバランスよく鍛えることで、タイムは縮んでいきますよね。

 当時の卓巳さんも、一見、迂回路を通っているようで、実はこれまで鍛えていなかった筋肉を鍛える経験になっていた。だから解放された途端に、爆発的な成果が出たんでしょう。

川原:確かにそうかもしれないですね。

:僕がよく伝えるのは、「鍛錬と我慢は区別しよう」ということです。この二つ、混同してしまいがちなんです。