妻の浮気が原因で離婚。突如、5歳の息子との父子家庭になった。手元に残された全財産は90万円。定時退社で保育園へ息子を迎えに行く毎日で、残業代ゼロ。年収400万円で、カツカツの生活だった。ギリギリの節約生活で、4年で1000万円を貯め、本格的に株式投資を開始。紆余曲折を経ながらも某企業の大株主になり、資産2億円以上を築いた。いまや成長し、就職した息子とふたりで焼鳥屋に行ったとき、これまでの半生を振り返り、「投資家」と「労働者」の話をした。
「サラリーだけで生きられる時代は終わった」
「億の資産をつくるにはお金に働いてもらうことだ」
「リスクをとらないと得られるものはないぞ」
離婚して父子家庭になり、全財産90万円から資産2億円以上を築いた父親が、投資術を初公開。いま息子へお金と投資の話を教える『どん底サラリーマンが株式投資で2億円』

全財産90万円から株式投資で2億円<br />サラリーマンが大株主になるという野望Photo: Adobe Stock

雑誌の推奨銘柄を
そのまま買って撃沈

【前回】からの続き。

株式投資を始めた頃は、インターネットで手軽に情報を得る手段がなく、かといってサラリーマンなので、投資する前にわざわざ有価証券報告書を入手して下調べする時間もなかった。

当時は営業部門にいて、取引先のスーパーマーケットに行っては、自社商品の回転効率を少しでも上げるために陳列棚の整理を手伝うのが日課。

家電量販店に常駐しているメーカーの応援販売員のような存在だった。

スーパーの仕入れ担当者から「ちょっと応援にきてくれませんか?」と連絡が入れば、休日でも関係なく売り場にすっ飛んで行った。

そんな調子なので、落ちついて株の勉強をしている余裕はなかった。

株式の売買も、ネット取引が当たり前の現在と比べれば、極めて原始的だった。

前日までの株価を新聞でチェックして、「短波ラジオ」を聴きながら値動きを確認。

証券会社に電話をかけて、売り買いの注文を出していた。

営業部門で外回りが多かったので、就業時間中でも売り買いは比較的自由にできた。

ホントはダメなことではあるが、いまとなっては大目に見てほしい。

電話で売りの注文を出しても、その後本当に売買が成立したかどうかはわからない。

午前中に注文を出しておいて、午後に証券会社に電話をかけて、「あの銘柄、売れましたよ」と教えてもらっていた。

なんとも牧歌的というか、のん気な時代だった。

当時、情報源として頼りにしていたのは、投資系の雑誌。

「今月の推奨銘柄」なんかを素直に信じて売り買いしていた。

そんな推奨銘柄の1つに、「三菱化工機」という会社があった。石油・化学などの装置を製造している三菱グループのメーカーだ。

事業内容も財務内容もよく知らないまま、「三菱グループだから安心だろう」くらいのノリで推奨銘柄を信じて買ってみたところ、株価が上がって利益を得られた。

すると同じ雑誌の「今月の推奨銘柄」に、2ヵ月連続で三菱化工機が載った。

それでまた買ってみたところ、買ったその日が最高値。

そこから株価が下がり続け、結局は半値で“狼狽売り”する手痛い失敗をした。