高島屋と大丸Photo by Satoru Okada

「百貨店の再生と、グループ収益基盤の強化」「完全復活から、再成長へ」――。2021年2月期通期決算を公表した高島屋と、大丸松坂屋百貨店を擁するJ.フロント リテイリングの決算資料には、新型コロナウイルスの影響から立ち直るための力強い文言が並んだ。巨額の最終赤字から再生し、復活することができるのか、その戦略を具体的に検証した。(リテールジャーナリスト 村上達也)

コロナ前から衰退産業と言われて
「復活」描く2社の戦略をひも解くと…

 高島屋は17年ぶり、大丸松坂屋百貨店を擁するJ.フロント リテイリングは統合前の大丸単体の赤字から19年ぶりの最終赤字――。新型コロナウイルスの感染拡大、とりわけ昨年春の緊急事態宣言による臨時休業は、このほど発表された2社の2021年2月期決算に多大な影響を与えました。

 高島屋は、連結営業収益が前年同期比25.9%減の6808億円、営業赤字は134億円、最終赤字は339億円。国際会計基準を導入しているJ.フロントは、総額売上高が前年同期比32.4%減の7662億円、営業赤字(その他営業収益、費用を含む)は242億円、最終赤字は261億円でした。

 昨年初頭の中国での感染拡大から、インバウンド客が“消失”した後、店の営業それ自体を止めざるを得なかったのですから、当然の結果です。その後再開したとはいえ、客足は従来のようには戻りません。

 コロナは変異株が広がり、2社が主要店舗を持つ関西地方の状況はとりわけ深刻です。高齢者へのワクチン接種は今月ようやく始まりましたが、今後はなかなか見通せません。

 これからも彼らにとって“いばらの道”が続くことは間違いありませんが、そもそも百貨店はコロナ禍の前から、インバウンド需要で都心の店舗が潤っていたとはいえ、総体としては衰退産業と言われていました。

 コロナ禍で彼らの「改革」と「復活」はさらに難航を極めるわけですが、21年3月期決算を控える三越伊勢丹ホールディングス、エイチ・ツー・オー リテイリングに先んじて決算を発表した2社は、今後の戦略をどのように描いているのか、検証してみましょう。