伝統校を左右する手腕、新校長人事で見る首都圏「中高一貫校」の将来目黒不動尊最寄りの東急目黒線不動前駅からすぐのところにある攻玉社は、文久3(1863)年に開かれた蘭学塾がルーツの超伝統校。帝国海軍と縁が深く、その点では海軍予備校として1891年に設立された海城とは世紀を超えたライバルでもある

校長交代の影響は傍で見るよりも大きい。新しい校長がどのように学校の現場をリードしていくかで、学校の内実は大きく変わっていく。前々回は主に付属校、前回はミッションスクールについても触れた。3回目となる今回は、伝統校を中心に取り上げる。生き残りを図る女子校、公立中高一貫校の設立が相次ぐ埼玉県と中学受験ブームが訪れた茨城県の様子についても見ていこう。(ダイヤモンド社教育情報)

よみがえった伝統校での世代交代

 2021年の東京大学合格実績が17人と、同じく男子伝統校である芝(東京・港区)の12人を抜いた攻玉社(東京・品川区)では、一足早く昨年10月、快活な英語科教員の岡田貴之氏が教頭から新校長に昇格している。男子進学校の場合、東大合格者数が翌年の入試の志願者数を左右する傾向があるため、2022年入試では注目校の一つとなるだろう。

 年々進学実績が向上している攻玉社は、東大合格実績47人の海城(東京・新宿区)や、1人差とはいえ栄光学園(神奈川・鎌倉市)を抜いた神奈川男子御三家の浅野(横浜市鶴見区)などの併願校でもある。今後はこれら難関ライバル校と肩を並べるべく、努力していくことになるだろう。

 同じく男子伝統校で、長らく低迷していた成城(東京・新宿区)は、8年間にわたって校長を務めた栗原卯田子氏の下で、すっかり進学校としてよみがえった。そもそも男子校に女性校長ということ自体が珍しい。毎朝校門で生徒を出迎える姿は“成城の母”そのものだった。栗原前校長には、都立の名門校である小石川高校最後の校長であり、中等教育学校の2期生までを見送ったという顔もある。栗原氏はこの春退任し、教務主任、教頭を経て内部昇格した岩本正氏に後を託した。

 成城は2018年を最後に高校からの募集をやめた。そのため、2021年から全生徒が中学入試を経て入った完全中高一貫校となる。岩本新校長の下、グローバル・リーダーを視野に入れた学校改革をさらに進めていくことになりそうだ。

 15年前、創立100周年を機に千代田区富士見から江東区有明に移転、女子校から共学化して校名も変更したかえつ有明は、東京湾岸にある私立中高一貫校の先駆けである。東京農工大学学長も務めた2016年就任の小畑秀文氏から、この春、教頭の前嶋正秀氏にバトンが渡された。小畑氏の前任者が辞任したとき、前嶋氏は校長代行も務めたことがある。晴れて内部昇格した印象である。帰国生も多く、新しい学びにも積極的な学校だけに、2021年入試でも人気が高かった。