空席が続いていた東京電力ホールディングスの会長に、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長が就任することが決まった。東電新会長に財界の超大物が就くのは喜ばしい限りのはずだが、なぜか東電社内ではおびえる声があるという。いったい、なぜなのか。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

「経営執行陣の監督指導、支援にひと肌脱ぐ」
超大物経営者の会長就任にざわつく東電

小林喜光東京電力ホールディングスの会長に就任することが決まった三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 放射能汚染という見えない恐怖で、日本を震撼させた東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年が過ぎた。

 あの事故から10年を経ても、柏崎刈羽原発(新潟県)でのテロ対策の不備など、原子力事業者としての資質に欠ける不祥事が続く東京電力ホールディングス(HD)。そんな東電HDの陣頭指揮を執る会長職を引き受けたのが、三菱ケミカルホールディングス(HD)の小林喜光会長だった。

「今後の東京電力の経営戦略の方向付け、経営執行陣の監督、指導、支援にひと肌脱ごうと考えた。大変に重責であるのは、重々承知の上」。小林氏は4月28日、東電HDの会長就任に関する記者会見で、あえて火中の栗を拾う決意を述べた。

 福島第一原発事故で威信が地に落ちたものの、かつて経団連会長を輩出した東電には、まだプライドがある。そして東電は震災以降、外部から招聘してきた会長職に就く人物の「格」を重んじている。

 経済同友会代表幹事などを歴任した財界の超大物である小林氏は、その格にふさわしい人物。ある東電HD幹部は「素晴らしい方に来ていただいてホッとしている」と歓迎する。

 ところが、である。財界の超大物である小林氏が会長に就任することについて、東電グループ内でおびえている声があるというのだ。いったい、どういうことなのか。