大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。ハーバードを首席で卒業後、幼い頃から続けているバイオリンを武器にニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業した。現在はバイオリニストとして活動しながら、テレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとしても活躍している。
日本から突如、世界のトップ校に飛び込み、並み居る秀才たちのなか、途方に暮れるような大量の難題を前に、どう考え、どう取り組み、どう解決していったのか? 著者が学び、実践してきたハーバード流の「考える力」について、自身の経験をベースに、どうすれば個人や組織が実践できるかを、事例やエピソードとともにわかりやすく紹介する。(こちらは2020年2月1日付け記事を再掲載したものです)

【テレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』でも活躍!】<br />ハーバード・ジュリアード首席卒の「合格力」とは?Photo: Adobe Stock

ハーバードも
ジュリアードも
問題解決力で
合格した

私はハーバードもジュリアードも「問題解決力」で合格したといっても過言ではありません。
私がハーバード大学を受験すると決めたのは、高校2年生の2月のことでした。

アメリカの大学入試は11月末が締め切りですから、残された期間は1年もありません。

まずはインターネットで、ハーバードの入学情報を集めることから始めました。

そして、合格のために何が必要かをリストアップしました。

問題集を取り寄せ、高校の先生に推薦状を書いてもらったりしながら、1つずつ目の前に立ちはだかる問題を解決していったのです。

ちなみにハーバードの受験には、以下のものが必要です。

1 履歴書
 (中学と高校までに選択した授業と成績、ボランティア活動や課外活動の記録など)
2 SATかACT(いずれもアメリカの大学進学適性試験)
3 高校の成績証明書、卒業見込み証明書
4 先生からの推薦状2通
5 高校3年時の全科目の成績証明書
6 小論文2本
7 スクールレポート(在籍する学校の実績を記述したもの)
8 面接

もっとも力を入れて取り組んだのは、とにかく英語の語彙を増やすことでした。

当然、すべて英語での受験ですから、英語圏の受験生と同等の英語力が必要です。

ネイティブでも知らないような英単語を含めて、最低でも1万5000語ほどを覚えていなければ太刀打ちできません。

英語力に磨きをかけつつ、SATの問題集を何度も何度もくり返し解いて受験に備えます。

小論文は合否に大きく影響するので、たっぷり時間をかけて推敲を重ね、自分の活動や個性をアピールするものを2本書きました。

この煩雑なハーバード入試の必要項目を、頭の中で同時進行させながら、1つずつ「対策→完了」させていったのは、まさに問題解決力と呼べるのではないでしょうか。

さて、ハーバードに入学してからの転機の1つに、副専攻した「グローバル・ヘルス」(Global Health and Health Policy)の授業があります。直訳すると「国際保健と保険政策」となります。

複雑な分野に聞こえますが、噛み砕いていうと、伝染病の予防や公害対策など地球レベルでの健康問題を、生命科学と社会科学の両方からのアプローチで解決しようという学問です。

公衆衛生の授業の1つは、3、4人でチームを組み、世界で起きている医療課題(疫病・途上国の健康問題・感染症など)のトピックを選んで、3週間で解決策をまとめてプレゼンするというスタイルでした。

何が正解かわからない課題を、どう解決するかのシミュレーションの連続ですから、問題解決力に関する多くの学びがありました。

また、私がハーバード学士課程の卒業後にジュリアード音楽院の修士課程に進みたいと決断したのは、足切り用の録音選考のわずか1ヵ月前のことでした。

録音選考とは、課題曲数曲の音源をネットで学校に送り、まず教授陣が審査することで、ニューヨークで行われる実際のオーディションに招待する学生を絞り込む「予選」のようなものです。

バイオリン科を受ける私にとって、録音オーディション用の課題曲には、伴奏が上手なピアニストの存在が欠かせません。

レコーディングするにも、優秀な音響スタッフが必要です。

何より、課題曲候補の中で自分がいちばん上手に弾ける曲を選ぶのも大切なステップです。

ハーバード受験時と同じく、これらの解決すべき問題をリストアップして、1つずつクリアしていきました。

その結果、見事突破。本試験となるオーディションへと進むことができました。

本試験では、事前に課題曲候補の中から演奏したい曲を提出します。10曲ほど必要なので、実にトータルで1時間半分の演奏量です。

そして、本番ではその場で教授たちが「この曲の第2楽章を弾いてみて」とか「ここの何小節から聴かせて」とランダムに指定していきます。

実際に弾いて聴かせるのは、用意した90分のうちたった15分ほどしかないのですが、「できることは、すべてやった」という自信のおかげで満足のいく演奏ができて、幸いにも合格しました。

こうした経験を通じて、どれだけ煩雑な課題を出されてもロジカルに片づけていく癖がつき、その問題解決力が高校時代には想像もできなかったような高いステージへと私を押し上げてくれました。

具体的にどうやって問題解決力を高めるかについては、次章でお伝えすることにしましょう。

解決すべき課題をリストアップして
問題をクリアしていますか?