パナソニックの呪縛Photo:Bill Ray/gettyimages

持ち株会社制移行後、最大の事業会社となるのが「パナソニック株式会社」だ。継承するのは白物家電や電材などの保守本流事業。特に家電事業は安定収益を稼いできた歴史があるだけに、旧態依然とした“伏魔殿”と称されてきたが、実は品田正弘・パナソニック専務執行役員は大外科手術に打って出ようしているところだ。特集『パナソニックの呪縛』(全13回)の第7回では、品田氏の改革の要諦を探る。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

売上高4兆円弱の「大パナソニック」誕生
トップが掲げる三つの利益1000億円事業

「彼は、ああ見えて強か。人の気持ちを受け止めはするが、最後は自分の思う通りに組織を動かしているはずだ」

 あるパナソニックOBは品田正弘・アプライアンス社(AP社)社長の“意外な”人物評を披露する。

 持ち株会社制移行後、最大の事業会社となる「パナソニック株式会社(以下、大パナソニック)」。この大パナソニックは、AP社の白物家電事業や、ライフソリューションズ社(LS社)の電気設備(電材)事業などを束ねるパナソニックの屋台骨だ。売上高は実に、4兆円弱となる見通しである。

 そのトップの座に就く最有力候補と目されている人物こそ、品田氏その人だ。品田氏は人当たりがソフトで、「今の役員の中では珍しく人徳がある“気配りの人”」と語られる。それだけに、冒頭のOBの品田評は意外にも聞こえるのだが、これはあながち間違っているわけではなさそうだ。

 何しろ、品田氏は大パナソニックについて、「営業利益1000億円規模の事業を3本確立できるはずだ」と豪語しているのだ。

 大パナソニックは低収益の黒物家電事業やハウジング事業(トイレや建材など)を継承しないため、AP、LSセグメントの合算値と単純比較するのは難しい。とはいえ、現在の実績値との乖離を考えると、品田氏が語る利益目標は極めて野心的である。

 品田氏には勝算があるようだ。パナソニックの「顔」である家電事業を支えてきたAP社という“伏魔殿”の「大外科手術」に向け、この約2年間に着々と地ならしをしてきたという自信があるのだろう。

 品田氏は、いかにして伏魔殿にメスを入れたのか。そして、大パナソニックをどのような企業へ変革しようとしているのか。レガシー組織に外科手術を施すには、並々ならぬ覚悟と根気が必要だった。