新型コロナ拡大を機に日本でも急速に広まった「テレワーク」。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ同社執行役員の髙橋豊氏が執筆した『テレワーク時代のマネジメントの教科書』だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。

報・連・相は<br />テレワーク下では<br />上司から部下に行うべきものPhoto: Adobe Stock

観察力の高い上司はコミュニケーション頻度が高い

 以前は、机に座っていれば、部下が列をなして報・連・相(報告・連絡・相談)にやってきたのに、テレワークになってからは、パソコンの前に座っていても、誰からもコンタクトがない、業務がちゃんと進んでいるのか、何かトラブルが起こっていないか、心配でたまらない、というマネージャーは多くいらっしゃいます。

 前項などで、「上司の高い観察力」が、部下のパフォーマンスや評価の納得度、就業継続意向などを上げることをお話ししました。では観察力の高い上司と低い上司は何が違うのでしょうか?

「上司の観察力」を高・中・低群に分け、高群と低群で比較すると、1日あたりのコミュニケーションの頻度がかなり違うことがわかります。観察力の高い上司は、ことあるごとに部下とコミュニケーションをとっているのです。

 せっかく部下を観察していても、それが部下に伝わらなければ意味がありません。「君のことをちゃんと見ているよ、理解しているよ」ということを部下に伝えるには、一度相談されたことや、話題になったことを覚えておいて、しかるべきタイミングで上司側からコミュニケーションをとることが大事です。

相手が欲しているタイミングで言葉をかける

 たとえば、私が、部下から「○○社の研修で講師を担当させてもらったのだけれど、どうやら満足してもらえなかったようだ」と相談を受け、その部下に「次回は、事前の打ち合わせをもっと念入りにして、クライアントの目的やニーズをしっかりつかまなくちゃね」というアドバイスをしたとします。

 その場合、彼が次に研修を担当するという情報が入ってきた時点でこちらから連絡して「このあいだは色々と反省していたけれど、今回はどう? クライアントに目的やニーズは聴けた? 困ったことや相談事項があれば言ってね」とこちらから相談しやすい雰囲気をつくります。

 また何かのリサーチを担当している部下がいたら、「○○さんが詳しそうだったからよければ紹介するよ」とアドバイスしたり、「今、テレビでその話をやってるよ」とチャットで送ったり……。そうすることによって、部下は「自分の悩みや仕事をちゃんと覚えていてくれたんだ」という気持ちになり、次へのモチベーションにも、上司との心理的安全性の確保にもつながっていきます。

 ポイントは、相手がどのタイミングで上司の言葉を必要としているのか、そのタイミングを見極めることです。

 そのためにも、上司はたとえテレワークであっても、打ち合わせや雑談の機会を大事にして、つねに部下の状況を把握しておく必要があります。部下の仕事の進行管理の仕方は、本書の第5章で詳しくお話ししています。