アサヒ国内酒類事業で苦境が続くアサヒ。苦境が続けば、リストラも現実味を帯びる Photo by Takeshi Shigeishi

アサヒグループホールディングスの2021年12月期第1四半期決算は四半期ベースで過去最高益を達成した。しかしその要因は、20年に買収した豪ビール事業の底上げによるもので、国内酒類事業の収益力低下が止まらない。営業拠点閉鎖などのコストカットは始まり、リストラに踏み切ってもおかしくない状況だ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

「生ジョッキ缶」が爆売れで品切れ続出
21年12月期1Q決算は過去最高益

「今後の販売数量見込みに対し商品供給が追い付かないため、計画していた4月製造分を出荷次第、一時休売せざるを得なくなりました」――。

 4月21日、アサヒビールはこんな発表をした。 話題の主役は「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」。開栓するときめ細かい泡が自然に発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる新商品だ。

 これが消費者に大ウケし、4月20日の全国発売直後から品切れが相次いだ。

 スーパードライは1987年発売のアサヒビールの看板商品であり、会社そのものだ。アサヒビールの塩澤賢一社長は「このビールがなければ、この会社はない」と断言するものの、近年のスーパードライには元気がない。

 2020年の販売数量は6517万ケースと、コロナ禍による業務用市場の不振もあって、12年と比較すると6割程度の水準だった。それだけに、生ジョッキ缶の爆売れは数少ない明るいニュースであった。

 生ジョッキ缶爆売れという“うれしい悲鳴”に呼応するかのように、アサヒグループホールディングス(GHD)の足元の業績は好調だ。

 アサヒGHDが5月14日に発表した21年12月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比11.6%増の4567億円、本業のもうけを示す事業利益が同78.3%増の283億円と、持ち株会社体制に移行した11年以降でいずれも四半期ベースで過去最高となった。

 ただしこの要因は、20年6月に買収が完了した豪ビール最大手であるカールトン&ユナイテッドブリュワリーズ(CUB)など海外事業の貢献によるものだ。

 大黒柱である国内酒類事業は、コロナ禍での業務用市場不振により大苦戦で、売上高は同16.5%減の1361億円、事業利益は同37.1%減の88億円と大幅な減収減益となっている。

 海外事業が好調だったとしても、不調の国内酒類事業では構造改革が始まっており、リストラに踏み切ってもおかしくない状況だ。