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米国でインフレ懸念高まる
米中銀メンバーは一過性との見方

 5月12日に発表された米国の4月CPIコアの上昇率は、米金融市場のインフレ懸念を一気に高めた。同CPIコアは前年比+3.0%と1996年以来の伸びに加速したが、これは、コロナ禍の影響で、昨年4月のCPIコア上昇率が前年比+1.4%と弱かった反動(ベース効果と呼ばれる影響)だ。しかし市場にとってサプライズだったのは、CPIコアが前月比+0.9%と1982年以来の高い上昇率だったことだ。

 S&P500種株価指数は5月7日に終値ベースで史上最高値をつけたが、翌営業日(10日)から12日まで売り優勢の展開となった。これは、今後、米国のインフレ率がさらに上振れれば、米長期金利が大幅に上昇するリスクが高まることを市場が嫌気したためと思われる。米金利上昇の影響を最も受けやすいとみられるハイテク株には、インフレ懸念は重要なテーマである。

 ただ、米連邦準備理事会(FRB)は、高インフレが一過性の現象と見ている。ウォラーFRB理事は、その理由を米4月CPI発表後の5月13日の講演で分かりやすく説明している。

 ウォラーFRB理事は、足元でインフレが加速している理由として、6つの要素を挙げた。1)昨年半ばの消費者物価がコロナ禍で下振れたことによるベース効果、2)エネルギーコストの上昇、3)給付金支給などの財政拡大策、4)積み上がった貯蓄による支出増加、5)サプライチェーンでのボトルネックの発生、6)労働者需要の増大に伴う賃金上昇の可能性である。

 また、ウォラー理事は、上記6つの要素によるインフレ圧力は、一定の期間が経過すれば、小さくなるとの見方を示した。具体的には、インフレ圧力が小さくなるタイミングとして、1)は今後数か月、2)は今年後半、3)と4)は給付金や過剰な貯蓄が消費に回った後、5)と6)は供給が需要に追いついた後、と指摘した。

 さらに同理事は、金融市場も高インフレが一過性と考えている例として、市場の5年先5年間の期待インフレ率(BEI※)が2%程度で推移しており、FRBの2%インフレ目標に沿っていることを挙げた。

※BEIはCPIを参照する物価連動債をもとに算出されるが、ウォラーFRB理事が講演で取り上げたBEIは、FRBが重視するPCEデフレータと比較できるように修正した値。