東京ディズニーランド・シンデレラ城Photo:JIJI

東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドが、2020年10月から今年1月にかけて、正社員を対象とした早期退職の募集を行っていたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。内部資料を読み解くと、メインターゲットは55歳以上だったとみられる。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

オリエンタルランドが正社員の早期退職募集
21年3月期決算は上場来初の赤字決算

「夢の国」でもついに、正社員の雇用にメスが入った――。

 東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドが、正社員を対象に早期退職を募集していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 対象は満45歳以上かつ勤続10年以上の正社員と嘱託社員。募集期間は2020年10月1日から21年1月31日で、応募した社員は3月31日までに退職した。既存の制度「ネクストキャリア支援プログラム」の対象範囲を拡充させる形で実施した。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休園や客数減で、オリエンタルランドの足元の業績は厳しい。21年3月期の売上高は前期比63.3%減の1706億円。最終損益は542億円の赤字で、1996年の上場以来初となる最終赤字に沈んだ。

 危機に対応すべく、オリエンタルランドは20年冬のボーナスの7割カットを発表するなど、コスト削減に取り組んできた。それでも、リストラには踏み込まないと業界ではみられていた。実際、20年7月の21年3月期第1四半期決算説明会では、「大前提として雇用を守りたい」と役員が述べている。

 こうした正社員の雇用を守るという方針から一転、オリエンタルランドは密かに早期退職を実施していたのだ。

 ダイヤモンド編集部は、20年秋にオリエンタルランドの社内で開示された「『ネクストキャリア支援プログラム』実施要項」を入手した。

 この内部資料では、プログラムの目的について、コロナ禍によって「組織によっては業務量が減少もしくはなくなる事態となり、社内でのキャリアの『自己実現』の可能性が以前よりも難しい状況になっている」と説明。その上で、「オリエンタルランドで培った能力を活かすためのキャリア支援の強化を主旨とし、期間を限定して、本プログラムの対象者および支援金の拡充を行う」と記している。

 詳細は後述するが、今回の期間限定制度を利用すると割増退職金が加算され、仮に月給50万円の社員が応募した場合は最大で1440万円が加算される計算になる。

「今回のキャリア支援制度の拡充は、早期退職の募集だし、多くの社員もそう捉えていた」とオリエンタルランドの関係者は苦笑いする。

 なお、オリエンタルランドは取材に対し、「従来から会社にある仕組みで、コスト削減のための早期退職施策ではない」と説明した。

 大規模な早期退職の実施は、オリエンタルランドの決算資料からも裏付けることができる。21年3月期第3四半期決算から、損益計算書の営業外費用に「割増退職金」という項目が加わったのだ。

 21年3月期に割増退職金として計上された額は18億1300万円で、前年同期の3700万円から49倍もの増加だ。

 内部資料には割増退職金の年齢別加算金の一覧が記載されている。それによれば、55歳以上が“ターゲット”になっていることが分かる。