ビジネスホテル写真はイメージです Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けているホテル業界。宿泊者数の減少は明らかであり、厳しい状況に追い込まれている事業者も少なくない。一方で、その影響は均一ではなく、エリアやホテルタイプ、出店モデルによっても大きく状況は異なっている。各種データを基に、そうした濃淡が異なっている状況を解説する。(オータパブリケイションズ マネージングディレクター 岩本大輝)

都内は受験シーズンから予兆
人気観光地でも稼働率一ケタの衝撃

「受験シーズンなのに、予約が入らない」――。2020年2月、東京のホテル関係者からは不安な声が筆者の耳に届き始めていた。当時、横浜港に停泊したダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルスの集団感染が騒がれていたものの、東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、ホテル業界全体としては盛り上がっていた。

 しかし、状況は刻一刻と変わっていった。中国のインバウンド旅行者に続き、国内旅行者のキャンセルも相次ぐようになり、主に都市部のホテル稼働率が急速に悪化した。

 下のグラフは東京の、宿泊特化型を中心に200超のホテルが加盟する「東京ホテル会」による平均稼働率の推移だ。1月より2月のほうが受験需要などで稼働率が上がり、その後も暖かくなるにつれて稼働率は上昇していくのが近年の傾向だった。ところが、20年2月の稼働率は70%近くまで下落。筆者に届いた「現場の声」と統計データは、まさに同じ方向を示していたのだ。

 その後は緊急事態宣言の発出により、日本全国各エリアにおいて、4月~5月のホテルの稼働率はかつてない「底」を迎えることとなった。インバウンドや日本人旅行者で賑わっていた有名観光地でも、「稼働率一ケタ」にまで落ち込んでしまったのだ。

 長期にわたるコロナ禍が、過去に経験したことのない「未曽有の危機」であることは、下のグラフを見れば明白だ。2000年5月以降、過去21年間の客室単価と、客室単価に稼働率を掛け合わせた業績指標「RevPAR(レブパー)」の推移を見てみよう(東京ホテル会データを基に筆者作成)。RevPARが「どん底」まで落ち込んでいるのが、読み取れる(同会は時期によって加盟ホテルが増減しており、業績指標推移が厳密には“Apple to Apple”の比較ではない)。