大坂なおみ選手の会見拒否騒動から学ぶ、受け手としての心構えPhoto:Tim Clayton - Corbis/gettyimages

テニスの大坂なおみ選手が記者会見を拒否、結果的に全仏オープンの辞退に至った。この顛末における、伝え方、そして世論の受け止め方を追う。(フリーライター 武藤弘樹)

トッププレーヤーの告白
大きく広がった波紋

 大坂なおみ選手の一連の行動が波紋を広げている。同選手は全仏オープンに出場、1回戦勝利後の会見に出席することを拒否し、大会側から罰金を科せられた。この後、大坂選手は同大会の出場辞退を決め、ツイッターでその真意や自身がうつ病で長く苦しんできたことなどを明かした。
 
 界隈は大騒動となり、さらにはテニス界にとどまらず世界中のメディアで是非が論じられるようになった。類を見ない行動を、さらにトッププレーヤーが取ったということで、これだけ騒動が大きくなったと思われる。
 
 本稿では会見拒否の是非について論じるつもりはなく、これまでの流れを通して(※6月3日現在)、大坂選手の伝え方に見られる良い点・悪かった点や、それを取り巻くメディア、われわれ世論がどのような姿勢でそれを受け止めるべきかを考察していきたい。

これまでの流れ
世間はどう反応したか

 まず世論の流れをおさらいしたい。国内に限定していえば、メディアの論調は段階を経て変わってきている。

 大坂選手が会見拒否の意思を表明したのは5月27日のツイッター(※日本時間)で、本戦が開幕した5月30日に会見を拒否、罰金と相なった。

 この時点では、国内の論調は「大坂選手はわがまま」「やり方がまずい」に傾いていた。「プロなんだから会見も含めて仕事」といった声も多く聞かれた。

 海外の事情に詳しい人などは、「日本メディアは切り取り方が偏っている」「外国人記者の中には、差別主義に基づいた意地悪な質問をする人もいる」といった意見を発していたが、少数派であった。
 
 しかし、6月1日に大坂選手はツイッターを更新し、そこで会見辞退、および大会棄権に至った経緯について語ったところ、流れが変わった。大会主催者の態度は一変し、大坂選手を支持することを表明、各地のテニス協会会長らが「大会出場選手の体験を改善していく」と言い、選手のメンタルヘルスに留意する構えを見せるようにまでなったのだ。
 
 国内メディアの切り口も大坂選手への疑問視一辺倒ではなくなってきて、「他のトップアスリートも大坂選手を支持」「勇気ある一石を投じた」など好意的なものが散見されるようになった。もちろん依然として「理解できないやり方」といった記事も見られる。

 この一連の流れを通じて、伝える側と受け手のあり方について考えてみたい。