東京・ビル街Photo:PIXTA

2020年度の企業収益は
コスト削減によって押し上げられた

 世界がコロナ禍に見舞われてから1年余りが経過した。いったん大きく落ち込んだ日本の企業収益は順調に回復する動きを見せているが、その中で顕著だったのが企業のコスト削減である。

 2020年度の日本企業の利益を要因分解すると、売り上げ減少による利益の下押しが、販管費等の削減によって大幅に緩和されていることが一目瞭然だ。

 実際、個別企業の決算を見るとコスト削減の方針を打ち出したケースが散見されたが、特に目を引いたのは、新型コロナウイルスが蔓延する中、出張費や広告宣伝費、販売促進費等が大幅に減少した企業の存在だった。

 コロナ禍によって従来の高コスト体質が図らずもあぶり出された企業では、今後収益環境が正常化に向かう中でも、コストを抑制する傾向が続く可能性がある。

 そして、実はこうしたコスト抑制の動きは今後、日本企業の収益性を抜本的に引き上げる潜在力を秘めている。その理由について、日本と欧米のROE(自己資本利益率)構造の比較を通じて明らかにしていこう。