効率よく仕事を進めたい、アイデアがパッとひらめくようになりたい、うまい受け答えができるようになりたい…。身近にある「こうなりたい」の近道は、「考え方のコツ」を手に入れることだ。
『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』では、MBAのクラス、学者、コンサルタントなど、「考えることにこだわっている」人たちが日常で使っている、確実に生産性が上がる考え方のコツだけを紹介している。ぜひ、あなたも“本当に役に立つ”考える力を身につけてほしい。

常識を超える「ベストアイデア」を生むたった1つのコツPhoto: Adobe Stock

ゼロベースで考えられる人間は少ない
―だからこそ価値がある

 人は何かを検討する際、それまでのやり方を参考にしたり、それまでにあったものに改良・改変を加えたりして新しいものとすることが圧倒的に多いものです。たとえば、人事制度を変えるとき、それまでの制度をいったん忘れ、ゼロベースで作っていては全く時間が足りません。何かの企画でも、それまでの議論をすべて忘れて新しい企画を立てるのは非常に難しいものです。状況にもよりますが、何かを構想する際に、それまでにあったものや考えたことを利用するのは、ある意味で合理的なのです。

 一方でこの方法の弱点として、イノベーティブなものが出てきにくい点や、時代の変化スピードについていけなくなるなどが挙げられます。変化が速い時代には、あまりに過去のものを引っ張って考えすぎることは、「次善」あるいは「そこそこ」の案を出すにはよくても、「ベスト」あるいは「素晴らしい」といわれるようなアイデアを出すうえでは機能しないことも多いのです。それゆえ、何か大胆な施策が必要とされている場合には、いったん過去をゼロリセットして考えることが有効になることも多いのです。

最終目的を意識する

 ゼロベースで考えるうえでの第一歩は、目的をしっかり認識しておくことです。人事制度を例にとると、「大きく変えること」などが目的化しては本末転倒です。「DXの時代に合った組織を構築する」「真にグローバルで戦える組織を構築する」といった目的がぶれていると、通常、良い結果は出てきません。

 目的を確実に認識する方法は、関係者で一度すり合わせることです。自分一人で完結するようなテーマであれば別ですが(例:プライベートなことや、自分一人で裁量権を持ちながら完結できる仕事など)、通常は何かしら周りの人に影響を与えたり与えられたりするものです。だからこそ、上長を含めた関係者と早期に目的を握り、常にその目的に立ち返って考えることが必要です(もちろん、環境変化の中で目的そのものを微修正する必要性を感じたときにはそうすべきです)。その際、紙やPCに書き出して可視化し、常にそれが目に飛び込んでくるようにしておくとよいでしょう。

 なお、一般に目的は同じでもそれをブレークダウンした「サブ目的」は、人によって若干重みづけに差が出るものです。それを最初に完全に埋めようとすると必要以上に時間を浪費する可能性があるので、そこは多少目をつぶり、最終目的を共有したうえで走りながら調整するとよいでしょう。

「これは最善か?」を問い続ける

 実際の仕事で常に最善を求められることはないかもしれません。コンスタントに70点から80点の結果を残し続けることがビジネスでは求められることも多いでしょう。ただ、それでは数多いる「優秀なビジネスパーソン」の一人となるにすぎません。仕事の内容にもよりますが、「素晴らしい!」と思われるような仕事をある程度のペースで行うことを意識したいものです。

 そのとき実践したいのが、自分がアウトプットするものについて、「これはベスト(最善)か?」を常に問うことです。そうすると、どのようなものにも必ず「アラ」や不完全な箇所が見つかります。それを対症療法的につぶしていくことでも完成度は高まりますが、それだけでは80点のものが90点や95点に近づいていくようなもので、150点といった突き抜けたものは出てきません。