新宿IKEAPhoto:Diamond

家具業界の王者であるニトリが「ニトリダイニング みんなのグリル」というファミレスを出店したのに続き、スウェーデン発の家具大手イケアもさる5月17日、IKEA新宿1階に日本のイケアとしては初めて量り売りでデリメニューを提供する「スウェーデン バイツ」を開店しました。なぜ家具大手が次々と食の分野に進出するのか、「シナジー」「顧客体験価値」の観点から解説します。(グロービス経営大学院 嶋田 毅)

多角化の成功確率を高める
キーワード「シナジー」

 企業が成長する上で、本業から多少離れた商材を取り扱ったり、新事業に多角化したりするのはよくある取り組みです。同じ事業ばかりやっていては、どこかで成長の限界が来ますし、その事業に何かあった時のリスクも大きいからです。

 たとえば、バイクメーカーとしてスタートしたホンダは今や自動車大手ですし、ネット書店としてスタートしたアマゾンは、取扱商品をどんどん増やし、今では数十万円の家電も売っています。

 また、アマゾンは「場の提供ビジネス」ともいえるマーケットプレイス事業を急拡大させていますし、クラウドプラットフォームでシェアナンバーワンを誇るAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)でも大成功をおさめ、重要なキャッシュ創出源としています。

 こうした事業拡大を行う際のキーとなるのが、シナジー≒範囲の経済性です。つまり、縁遠い商材やビジネスに進出するのではなく、企業の持つ経営資源やノウハウ、あるいは顧客ベースなどを活用・共用できる事業の方が、全くのゼロから土地勘のないビジネスを立ち上げるよりもスピード面でもコスト面でも優位に立て、成功確率が上がりやすいのです。