38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回も特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ!

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アクルーアルとは、税引前当期利益から営業CFを引いた金額

カノン 前回先生は三越伊勢丹は他の二社と比べて業績が芳しくなく、このままでは将来も苦戦するようなことをおっしゃったと思いますが、その理由は何でしょうか?

林教授 第一に営業キャッシュフローが少なく、特にアクルーアルが極端に少ないからだ。ここでアクルーアルとは当期利益から営業CFを引いた金額のことだ。言い換えれば、PLの当期利益と儲けの差ので、マイナスが大きいほど儲けが利益より大きいことを意味する。次の表は、キャッシュフロー計算書にアクルーアルを加えたものだ。詳しくは『会計の教室』で勉強しておきなさい。

カノン この表ですけど、三越伊勢丹と高島屋の税引前当期利益は、ほとんど変わりませんね。

林教授 数字だけ見ればね。だが、三越伊勢丹の税引前当期利益には(株)三越伊勢丹不動産の株式売却益が含まれているんだ。どうやら2020年度は大規模なリストラをしたようだ。

2020年度は、三越恵比寿店、イセタンハウス、バンコク伊勢丹など収益力に課題のあった店舗の営業終了、株式会社三越伊勢丹研究所の事業終了、株式会社三越伊勢丹不動産の株式譲渡など、経営資源の再配分、事業ポートフォリオの組み替えを進めてまいりました。(決算短信より)

カノン Jフロントリテーリングとのアクルーアルの差額は、もっと大きいですね。

林教授 それは、Jフロントリテーリングが積極的に投資を進めてきたからだ。投資が増えれば減価償却費も増える。

カノン だから減価償却費が三越伊勢丹より220億円も多いんだ。