大学#19Photo:PIXTA

理系を選択する受験生にとって、一番重要なのは「大学選び」ではなく「学科選び」だ。なぜなら同じ大学でも、どんな分野を学ぶかによって、大学院進学率や就職活動の状況、主な就職先がまったく異なるからである。特集『入試・就職・序列 大学』(全23回)の#19では、主要11大学の専攻分野別の進路データを紹介していく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

理系学生の大学選びは「学科」が重要!
7分野で異なる進路と就職

 理系の受験生が学科選びをする際、何を基準に決めればよいのか。それは、大学院進学率や具体的な就職先など、その後の進路である。

 理系の学部は、理工学部、農学部、工学部などに分かれているが、さらにその中で学科が細分化されて設けられており、その学科ごとに学ぶ内容も大学院進学率も、さらにはその先のキャリアも、百八十度変わってくる。

 もちろん、興味のある分野を学ぶことを最優先にすべきではあるが、実際のところ学科選びによって、就職活動や大学院進学、そして就職先に大きな差が生じるのも事実だ。

 下図は、慶應義塾大学の理工学部と早稲田大学の理工学部(基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部の3学部を合算)の、それぞれの大学院進学率と主な就職先を比較したものだ。

 このように、学部で比較しても、あまり顕著な差は見えてこない。そこで、大学ごとに複数ある理系学科を「情報」「機械・工」「電気・電子」「数学・物理」「建築・土木」「化学」「生物・農」の七つに分類し、【就職状況】【大学院進学率】【主な就職先】を比較してみた。

情報・機械・電気は就職に強い!
就活の「企業エントリー数」で比較

 初めに、就職活動の実情から比べよう。下表は、今年就職活動をしている理系大学院生約1000人へのアンケートを基にした、「就活でのエントリー企業数」を比較したものである。

 表を見ると、「情報」「機械・工」「電気・電子」はエントリー数が比較的少なく、10社未満が大半だ。一方、「数学・物理」「建築・土木」「化学」は10~14社エントリーの割合が高い。さらに、「生物・農」に至っては、30社以上受ける割合が最も高くなっている。

 一般的に考えれば、エントリーする企業数が少ないほど、就職活動に苦戦していない状況にあると推測できる。逆に、エントリーしている企業数が多ければ、それだけ就職活動に時間と労力がかかっているといえるだろう。つまり、専攻分野によって企業からの需要は大きく異なり、就職活動の状況にもばらつきが出ていることが読み取れる。

 続いて、次のページからは、主要11大学の理系学科を大きく七つに分類し、専攻別の大学院進学率と主な就職先を割り出し、比較している。11大学とは、電気通信大学、上智大学、東京理科大学、明治大学、青山学院大学、中央大学、法政大学、関西大学、関西学院大学、立命館大学、名古屋工業大学のことだ

 実際に比べてみると、同じ大学の同じ学部であっても、学科が違えば、大学院進学率や就職先にばらつきがあった。また、大学院進学率の高い学科や、企業からの需要が高い学科なども分析した。