EC戦略でヘルスケア事業に変革を起こす中小企業

DX導入で飛躍する中小企業の“いま” vol.2

(左)AKAISHI(静岡県静岡市) 代表取締役社長・赤石恒一氏
1946年創業。祖父の代に下駄製造からスタートし、健康事業などを経て2000年代に靴事業へ進出。自身も靴医学を学び、 保健学博士を取得。科学的根拠に基づいた独自の靴作りが圧倒的な支持を集める。
(右)エル・アイ・シー(兵庫県加古川市) 代表取締役・船原政一氏
1991年創業。靴下製造を経て、糸の調達から生産管理まで日本製にこだわった女性用インナーウエア製造で高評価を得る。2019年、協業先である創業50年以上の塩山メリヤスの事業を受け継いだ。

コロナ禍の逆境にあって市場と消費者のニーズをいち早くくみ取り、DX(デジタルトランスフォーメーション)/EC(電子商取引)によって業績を伸ばした中小企業の“勇者”たちを紹介する連載企画。第2回は、外出が制限され巣ごもり消費が高まる中、独創性と熱意で激戦のヘルスケア商品事業で成功を収めているAKAISHIとエル・アイ・シーのビジネス戦略に迫る。

【事例1:AKAISHI】
“靴は実店舗”という既成概念を超え
ECをさらに重視していく

荷重配分が前足部60%、かかと40%のパンプス

「足の悩みを解決する靴を世に送り出し、“足のかかりつけ医”のような存在になる。それがAKAISHIというブランドのミッションです」。こう語るAKAISHI代表取締役社長の赤石恒一氏は、保健学を修め博士号を持つ。慣例や経験値主体で作られることが多かった靴の製造に医学・人間工学やデータ分析という視座を加え、商品開発に生かしてきた。

 赤石氏が続ける。

「例えばヒールの高さやソールの幅、靴の重さなども考え抜いて、歩きやすく疲れない、痛くならない靴を目指しています。特にパンプスなどは足に合わないと痛みが出やすい靴の一つです。靴医学を学び、外反母趾の知識を持った開発者が、論文を調べて、特許を取得するなどAKAISHIならではの履きやすいパンプスを作っているのです」(以下、同社のコメントは全て赤石氏)

 体の重心のバランスを整え、O脚改善に効果のあるサンダルや、足裏の疲れやすい筋肉に作用し指圧効果のあるフットベッドを備えた室内履きも開発し販売している。

「履いてくださった方にアンバサダーになっていただき、認知度を上げていきたい」

 製品同様、サービスもユニーク。購入した商品を試し履きして、爪先や指周辺がきつい、かかとが浮く、くるぶしに当たるなど、履いていて違和感がある箇所については履き心地の調整を依頼できるのだ。驚いたことに調整は何度でも無料で、送料も無料だ。さらに、対象商品の中には “調整シート”を最初から同梱している商品もあるという。

「ECや通信販売ですと、試し履きができない場合がほとんど。そこを不安に思うユーザーにも大変好評です。商売はお客さまに満足していただいて対価をもらうもの。お客さまの足に合う靴を提供して、満足度を高めたい」

 AKAISHIのECへの参入は早く、2005年ごろから始めていた。もともとBtoB、つまり卸がビジネスの柱だったが、いまやBtoCのECが売り上げの約半分を占めているという。AmazonのECサービスを利用し始めたのは19年のこと。先行していた自社ECサイトなどの売り上げに影響が出るのでは?という懸念は、杞憂に終わった。

「自社サイトで購入する方は、自社サイトでしか購入しない。Amazonで買う人は、ずっとAmazonで買う。購買行動を分析してこのことが分かってきました。Amazonでの売り上げの伸びは好調です。開設してから約2年半で、EC全体の中で10ポイント弱シェアを伸ばしています。ECなら当社が見せたい商品ラインアップをそろえられることもあり、ECチャネルはこれからますます重視していきたい」

靴医学は社長の他、多くの社員が学んでいる

問い合わせ先

アマゾンジャパン合同会社
https://www.amazon.co.jp/
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