38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしてきました。今回も特別編として書下ろしの記事を掲載します。登場人物は、これまでと同じく林教授と川村カノンの2人。注目企業の決算書はどうなっているのか? 注目企業の会計のカラクリなどについて解き明かしていきます。しばしお付き合いください。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ!

貸借対照表は、<br />「ベニスの商人による世紀の大発明」<br />ってどういう意味?Photo: Adobe Stock

知識を丸暗記しても応用が利かない

カノン 今日は先生にお話ししたいことがあるんです。言いにくいことなんですけど。

林教授 なんだね。遠慮なく言ってごらん。

カノン 怒らないでくださいね。

林教授 大丈夫。ボクはいちいち腹を立てるほど若くはない。

カノン 私の大学の友人二人から先生の『会計の教室』の感想を聞いたんです。上野君は先生のご著書の愛読家ですが、彼は『会計の教室』を「難しい本だ」って言ってました。ちなみに上野君は、会計のゼミに入っていて簿記検定の二級を持っています。

林教授 なるほど。で、もう一人は。

カノン 田端君です。彼も会計のゼミ生で、今年簿記検定の一級に合格しました。その彼の読書感は「簡単過ぎて、最後まで読む気になれない」って、もうひどいものでした。

林教授 ほう、手厳しいね。だけど、読了せずに評価するというのはいただけない。で、君はどちらの考えに近いかね。

カノン 私は直接先生から教わりましたから上野君ですかね。田端君って頭がいいから簡単すぎるのかしら。

林教授 頭がいいのか、あるいは暗記に走るタイプなのか。おそらく、後者だろうね。

カノン つまり田端君は頭が良くないってことですか?

林教授 いやいやそうは言っていない。難しい試験でも反復練習すれば合格する。つまり、丸暗記でね。だがそれでは応用が利かない。おそらく、『会計の教室』に書いてあることのほとんどの知識は、すでに田端君の頭に入っているんだろうね。だが、理解していない。

カノン そうですか……。