サブプライム問題が表面化し、次々とヘッジファンドが破綻に追い込まれていった2007年後半、影響は随所に見られ始めていたものの、アメリカ政府の反応は比較的冷静でした。銀行や投資銀行がサブプライム関連損失を相次いで公表してもなお、金融業界に起こった一過性の出来事として取り扱われていたのです。この見解の甘さと対応の遅れが、より大きな危機の傷口を広げていることなど気付きもせずに……。

まだまだ楽観論も
多かった2007年後半

 「米国の経済成長は10―12月期にかなり減速し、来年春まで停滞する」

 2007年9月に4年3ヵ月ぶりに利下げに転じた、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、11月の時点でこのように述べています。この言葉と共に、FRBは11月、12月とそれぞれ0.25%ずつの利下げを行いましたが、ここから先に必要が生じるさらなる利下げに関しては、この時点で想定していなかったと言えます。事実、冒頭の発言の裏には、サブプライム危機の影響で景気は一時的に失速するものの、2008年の後半からは回復に向かうとの考えがあったようです。

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 同じ頃、政界においても、問題はサブプライム証券の値下がりに留まると考えられており、財政出動や金融機関への直接的な救済には慎重な姿勢が大勢を占めていました。実際、2007年中にサブプライム危機に対して打たれた主な対策は、FRBによる金融緩和と、サブプライム・ローンの金利据え置き・借り換え支援策くらいです。むしろこの時期は、景気の大幅な下振れよりも、相次ぐ利下げによるインフレの方が懸念されていたと言えます。

 さらに同時期、2007年10月に発表された世界経済見通しで、2008年のアメリカの成長率予想は2.8%から1.9%に下方修正されました。減速はするものの依然プラス成長が予測されていたことを見ても、「ソフト・ランディング」を見込んでいた当時の様子を窺い知ることが出来ます。