時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

本来の姿とはかけ離れた、<br />日本のコンプライアンスの<br />実態とは?Photo: Adobe Stock

すべての管理・本部部門は、
経営の意志に沿って動くのが大原則

 事業が発展するにつれて、営業や商品調達、商品開発などの事業のライン部門の分業と共に、人事や経理、法務などの管理系部門の分業も進みます。彼ら本部機能は、トップの意志のもとに現場へのサポートを行うとともに、トップの経営管理のための業務を分業している存在です。

 基本的には、すべての管理・本部部門は、トップ業務の分業から始まっていますので、トップの意志のもと、あるいは経営の意志に沿って動くのが大原則です。

 ところがトップの代が変わるにつれて、特に本部に対してはトップの関与が甘くなりがちになります。

 一方、もし本部機能がトップの承認を得た施策を進める時、現場に向かって、「経営の意志として……」の言葉を振りかざし始めると、トップという大義名分に守られた特権組織になりかねない危険をはらみます。

 これは別に、本部には悪意のある人材が巣喰いやすいという意味ではありません。この点について、コンプライアンスを事例に挙げて考えてみます。