安倍前首相Photo:123RF

現在の政局の焦点は、「ポスト菅」であろう。9月末までに予定される自民党総裁選で、菅義偉首相が再選されるかどうか。菅義偉首相を脅かす候補者は誰かということだ。そして、安倍晋三前首相の3度目の首相登板があるかどうかに焦点が当たっている。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

「議連」の核となった安倍前首相、菅内閣の倒閣に動くのか

 今、政局で注目されているポイントは2つある。

 一つが、自民党内で「議員連盟」を結成する動きが相次いでいる「議連ブーム」。もう一つが、自死した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが、学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」が、遺族側に開示されたことだ。いずれも中心人物は、安倍前首相である。

 安倍前首相は、今数々の「議員連盟」に名を連ねている。

 例えば、21年4月、安倍前首相に近い稲田朋美元防衛相を会長とする「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟」が発足して安倍前首相が顧問に就いた。また、5月には甘利明党税調会長が「半導体戦略推進議員連盟」が発足した。ここでも、安倍前首相が麻生太郎副総理・財務相とともに最高顧問に就任した。6月15日には、二階俊博党幹事長を会長とする「『自由で開かれたインド太平洋』推進議員連盟」が設立された。ここでも、安倍前首相が最高顧問だ。

 また、6月11日には、岸田文雄前政調会長が「新たな資本主義を創る議員連盟」を設立した。自民党の全派閥から議員145人が集まった設立総会では、安倍・麻生・甘利のいわゆる「3A」が最高顧問などへ就任することになった。この設立総会で挨拶した麻生副総理・財務相は会場をジロリと見まわして、「真面目に政策を勉強する顔ばかりとはとても見えない。政局の顔がやたら見える」と、歯に衣着せず「議連ブーム」の本質を指摘した。議連は、政策を勉強する会という「建前」があるが、そんなことは誰も信じていない。

 今、これら「議連」という政局の核となった安倍前首相が、本当に3度目の首相登板を目指して、菅内閣の倒閣に動くことがあるのかについて、ジャーナリストや識者が論している。しかし、私は、菅首相が辞任せざるを得ないような事態にならない限り、安倍前首相が自ら動くことはないと思う。

 そう考える根拠だが、いまだに「森友学園問題」「桜を見る会」「河井夫妻選挙違反事件」と、安倍前首相を取り巻くスキャンダルがくすぶっていることだ。