ここまでできる健康管理、スマートバンド活用法写真はイメージです Photo:PIXTA

 健康管理アイテムとして人気のスマートバンド。緊張する診察室で1回こっきりの検査を受けるより「通常運転」の健康状態を把握しやすい。

 平時との比較で異常の早期発見が期待できるため、臨床応用を目指した研究が進んでいる。

 米スタンフォード大学の研究グループの報告によると、スマートバンドで測る「心拍数」や「体温」「運動量」のデータは、おなじみの血液検査の結果と少なからず相関するようだ。

 本調査では54人(女性30人)のボランティアが心拍数、歩数、皮膚の温度と汗の分泌量を反映する皮膚表面の電気活動を計測できる「Intel Basis」のスマートウオッチ(SW)を装着。女性参加者の平均年齢は56歳、男性は同58歳で装着日数は平均343日だった。

 平均3年間の追跡期間中に、クリニックで通常の血液検査やバイタルをチェックし、SWの計測データとの関連を検討した。

 その結果、SWのデータは簡単な臨床検査の結果と相関することが示された。たとえば、SWで計測した心拍数の変化は、赤血球数や酸素を運ぶヘモグロビン値の変化と相関するという。

 研究者によれば、心拍数の一貫した上昇は「体内の酸素不足」を表す。つまり、鉄欠乏性の貧血や体内の出血を伴う病気――胃潰瘍や消化器がんなどの兆候を示している可能性があるわけだ。家でくつろいでいるときでも心拍数が高い場合は、念のために病院を受診するのが正解だろう。

 このほか、皮膚電気量の低下は発汗量の低下、すなわち「脱水症状」との関連を、皮膚の温度上昇に運動量の低下が伴う場合は、病原体が侵入し、炎症を起こす免疫細胞が活性化していることを示す。

 平たくいえば風邪をひいて熱っぽいわけだが、データで示されると病院に行かないまでも「少し休もうか」という気持ちになる。

 発汗計測機能付きのSWはまだ少ないが、これからの「熱中症」の季節に重宝するだろう。

 現役世代向けのようで、案外、スマートバンドは高齢の両親へのプレゼントとして最適なアイテムなのかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)