「みどりの⾷料システム戦略」第1回:「若者に⽀持され、選ばれる農林⽔産業に変わらなければ持続性はない」枝元真徹・農林⽔産事務次官は訴える

農林水産省

農林⽔産省は2021年5⽉、⾷料・農林水産業の調達、⽣産、加工・流通、消費に⾄る新たな構造改⾰プランである「みどりの⾷料システム戦略」を公表し、政府の「経済財政運営と改⾰の基本⽅針(骨太の⽅針)2021」の⼀つとしても確認された。そもそも新戦略はどのようなもので、どのような背景から作られたのか。枝元真徹・農林⽔産事務次官に聞いた。

地球環境に負荷をかける農林⽔産業を改める

――そもそも「みどりの食料システム戦略」とは、どのような戦略なのでしょうか。

枝元真徹(えだもと・まさあき) 農林水産事務次官。1961年、鹿児島県生まれ。東京大学法学部卒業後、農林水産省に入省。2016年生産局長、19年大臣官房長を経て、20年8月より現職。

枝元事務次官(以下、枝元) 加⼯・流通、消費も含めた広い意味での農林⽔産業において、「⽣産⼒向上と持続性の両⽴をイノベーションで実現するための戦略」です。

 現在、農林⽔産業が置かれている状況は、従事者の⾼齢化や地域コミュニティーの脆弱化などによる持続性の低下、地球温暖化による農林⽔産物の品質低下、⾃然災害の⼤災害化、さらには新型コロナウイルスの感染拡大の中であぶり出された国際的なサプライチェーンの混乱や巣籠もりによる需要の急変など、⽣産者だけでは対応できない数々の環境の変化に直⾯しています。

 例えば⽇本は、⾷料の約6割が輸⼊であり、また農業栽培の三⼤基本肥料である窒素、リン酸、カリウムの原料は、いずれもほぼ100%を海外に依存しています(図1参照)。いったん国際的なサプライチェーンに混乱が⽣じれば、⾷料確保はもちろん農業⽣産そのものが⽌まってしまうリスクをはらんでいます。⼀⽅で、海外依存度の⾼さは、海外の関係産業における⽇本の影響⼒の強さと表裏⼀体であり、国際的な役割分担や環境負荷軽減などの戦略の構築で⽇本が果たせる貢献の⼤きさを物語ってもいます。今こそ、⾷料システムという⼤きな視点での総合的な戦略の重要さが増しています。

――しかし「生産力の向上と持続性の両立」は、ある意味で矛盾したテーマではありませんか。

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