大手塾で算数講師の経験を積んだ後、算数専門のプロ家庭教師として約20年間、2000人以上のお子さんを指導してきた中学受験専門のカリスマ家庭教師・安浪京子先生は、その経験から「ノートをひと目見ると、その子の学力がわかる」と言います。
ノートとは、思考を整理して、それを自分や相手(採点者)に伝える練習をするための基本の道具。しかし、子どもはもちろんのこと、保護者ですら、ノートの価値を低く見積もっている方が多いそう。6年生でもノートの書き方を知らない子は多く、その状態のまま、受験勉強に励んで伸び悩んでいる子は多いのです。
本連載では、「ノートの正しい書き方を知らずして、学力は上がらない」と断言する安浪先生が、指導の中で必ず教えるノート術を初公開した話題の新刊「中学受験 必勝ノート術」の中から、一部を抜粋し、ご紹介していきます。

【中学受験必勝ノート術】<br />正しいノートの書き方を知らない子は、<br />6年生になると成績が急降下する!Photo: Adobe Stock

手元を見ている家庭教師だからこそわかる「ノートの重要性」

 指導で横に座っていると、子どもはノートの書き方、ひいては勉強の仕方そのものを知らないということがよくわかります。

 顕著なのは、思考を伴わない書き方をしているケースです。とても丁寧に書かれたノートの場合、保護者の方は「よく頑張っている」と感心するかもしれません。ところが、書いている様子を近くで見ていると“ただ書き写しているだけ”というケースがどれほど多いことか。問題を読み、少し考え(た気になっ)てから解説を左から右へ書き写す、あるいは田んぼの田の字の縦棒だけをダーッと書いて、次に横棒をダーッと書くような“作業ノート”もあります。

 このようなノートの書き方では頭をほとんど使わないため、いつまでたっても学力は上がりません。しかも、完成したノートはそれなりに美しいため、「うちの子はちゃんと勉強している」と、お子さんが抱えている問題に気づかないまま時間を浪費していくこともあります。

 しかし、ノートの正しい書き方を習得すれば、学習効率が上がり、点数も上がり、子どものやる気もアップして、合格に大きく近づくことができます。

ノートをちゃんと書かずとも偏差値の高い子とは?

 もちろん、中にはノートをちゃんと書かずとも偏差値の高い子もいます。

 ひとつは、算数オリンピックで金賞をとるような子。この手のギフテッド系の子は、思考をノートに書き出さなくても、頭の中で解くことができます。

 もうひとつは、偏差値60前後で「算数が得意」と自負している4、5年生。実はこの手のお子さんは、要注意です。面倒だからと言って計算の式を省いたり、ノートをろくに書かずにいたりすると、6年生になってみるみる成績が落ちていきます。なぜならば、6年生の内容は一気に複雑に、そして高度になり、とても頭の中だけでは処理できなくなるからです。

ノート術は、受験勉強のためだけではない一生モノの技術

 つまり、よほどの天才ではない限り、ノートの書き方を早いうちから習得しておくことが、学力向上につながるということです。

 また、長い目で見ても、ノートを正しく書けるようになることは大いにプラスになります。なぜなら、物事を論理的に考えて相手にわかりやすく伝えるという、コミュニケーションの肝が身に付くからです。ノート術は、一生モノの技術でもあるのです。