透析中に自転車こぎを、心臓の状態が改善写真はイメージです Photo:PIXTA

 日本では、およそ34万人の透析患者のうち97%が透析施設で週3~4回×4~6時間の「血液透析」を受けている。

 透析導入直前は腎機能の低下で思うように身体を動かせず、筋力や持久力が衰え、透析導入後も歩行や日常生活に支障が出やすい。しかも身体活動量の低下は、余命に直結することがわかってきた。

 兵庫医療大学の研究グループが透析患者の身体活動量と死亡リスクとの関係を解析した結果、非透析日の歩数が4000歩未満の患者は、4000歩以上の患者よりも死亡リスクが2.37倍高いことが判明した。

 同じグループからは非透析日に加え「透析の当日」も運動をすると、さらに死亡リスクの軽減が期待できることが報告されている。「透析日」「非透析日」にこだわらず、意識して身体を動かした方が延命効果を期待できるわけだ。

 世界的にも透析治療+積極的なリハビリテーションが注目されている。

 英国で行われた試験では、あおむけ状態で利用できる特殊な「下肢エルゴメーター」で、透析中に毎回30分のエクササイズを行うグループと、何もしない対照群とで半年後の心臓の状態を比較。

 その結果、エクササイズ群では、うっ血して肥大していた心臓が正常な大きさに回復したほか、繊維化して硬くなっていた心筋や血管の柔軟性が改善したことが判明している。特に、動脈血を送り出す左心室の大きさが正常に戻ったことで、心筋梗塞や心不全など致命的な心疾患の進行を抑えられる可能性が示唆された。

 透析患者の死因の3~4割は心不全や心筋梗塞などの循環器疾患で心臓の健康を守る意味は大きい。透析患者だからと安静を守り過ぎるのはむしろ、健康リスクになる。

 さて、非透析日は適度なウオーキングや足踏みのほか、座ってできるレジスタンス運動を取り入れてみよう。透析中の運動については、主治医や理学療法士に相談して最適なプログラムを作ってもらうといいだろう。

 適度なエクササイズは、退屈な透析時間を有意義に過ごす方法としてもうってつけだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)