100本ノック夏#2Photo:Construction Photography/Avalon/gettyimages

日本鉄鋼連盟の会見で、橋本英二会長(日本製鉄社長)が突如、鋼材の「値上げ宣言」を行った。自社の営業部隊を鼓舞するとともに、トヨタ自動車をはじめとする重要顧客に“けん制球”を投じた形だ。特集『決算書100本ノック! 2021夏』(全10回)の♯2では、いつになく値上げへの意思を強く見せる鉄鋼業界の裏事情を追った。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「週刊ダイヤモンド」2021年6月26日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

日本製鉄社内を震わせた
鉄連会見での社長の「一言」

「日本国内における(特定顧客向けの)ひも付き価格を、早急に是正する必要がある。このままでは採算が取れなくなり、安定供給に責任を持つことができなくなる」

 5月28日、日本鉄鋼連盟の定例会見で、橋本英二会長(日本製鉄社長)は「日本製鉄個社の社長としての発言」と前置きしながら、突然、そう切り出した。

 自社の営業部隊に対する鼓舞と、トヨタ自動車をはじめとする重要顧客へのけん制であることは明白だった。実際に、鉄連という社外での発言だったにもかかわらず、日本製鉄では橋本社長の“値上げ宣言”の臆測が即座に広まり、社内に緊張が走った。

 無理もない。5月末は、鉄鋼業界にとって“一大イベント”を控えた重要なタイミングだった。