100本ノック夏#4Photo:Bloomberg/gettyimages

ガソリン車やハイブリッド車で一時代を築いたトヨタ自動車は、電気自動車(EV)シフトに消極的だとされてきた。だが、設備に関わる「数字」に着目すると、トヨタの意外な姿が浮き彫りになった。特集『決算書100本ノック! 2021夏』(全10回)の#4では、トヨタが用意周到な電池調達戦略を突き進む思惑に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

「週刊ダイヤモンド」2021年6月26日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

表向きは「EV一辺倒」に反対の急先鋒
それでも用意周到に電池をかき集める!

 昨年末、世界的な脱炭素の流れを受けて、日本政府が2030年半ばに新車販売を「ガソリン車ゼロ」にする目安を掲げた。それ以降、豊田章男・トヨタ自動車社長は、「電気自動車(EV)一辺倒」の電動化方針に対して繰り返し警鐘を鳴らしてきた。

 トヨタはハイブリッド車や燃料電池車(FCV)など、EV以外の電動車シフトも並行して進める立場を貫いてきたため、世界の潮流である「EVシフト」に消極的なようにも見受けられる。

 しかし、その表層的な一面を切り取って、トヨタがEVに及び腰と断じるには誤解がある。

 どういうことか。実は、EVの基幹部品である車載電池への投資姿勢を見れば、むしろトヨタこそEVに積極的な自動車メーカーだともいえるからだ。

 それでは、トヨタと競合自動車メーカーとの電池調達戦略の違いを、決算書の「設備」に関わる数字で明らかにしていこう。