郵政消滅#6写真:毎日新聞社/アフロ

日本郵政の屋台骨を支えてきた「ビジネスモデル」が揺らいでいる。ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社が、もうからない日本郵便を支える構図が限界を迎える中で、全国一律の「ユニバーサルサービス」を支えるのは一体誰なのか。そのコスト負担を巡り、政治家、旧郵政キャリア、地方の郵便局長をはじめとする利害関係者の“骨肉の争い”が始まった。特集『郵政消滅』(全15回)の#6では、問題が噴出する「郵政民営化」見直しの行方を追う。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

郵便局網の維持に国費投入論
日本郵政取り巻く思惑迷走

「地方交付税交付金を基金に入れたらどうか」――。

 自民党のある議員は、日本郵政グループの全国2万4000局に及ぶ郵便局を維持するために、税金を投入するアイデアを披露する。

 国費の投入先として候補になっているのは「郵便貯金・簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク機構(郵政管理・支援機構)」という機関だ。2019年4月から運用が始まっている制度で、2万4000局の郵便局網を維持することを目的として、日本郵政傘下の日本郵便に年間3000億円程度の資金を供給している。

 もっとも現在は、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険が年間3000億円を負担して、郵政管理・支援機構に拠出し、その資金がそのまま日本郵便に交付金として流れ込む仕組みになっている。

 今は、年間200億〜300億円程度の消費税が「節約」できるという小手先の仕掛けに過ぎない。だが、将来的にゆうちょ銀とかんぽ生命という兄弟会社からの“支援金”では、郵便局網を維持できなくなることをにらんで、将来的な国費投入の受け皿として想定されている。

 確かに、地方の過疎化対策として、郵便局ネットワークの維持は一つの手段になり得る。だが、「郵便局を維持するために、地方公共団体の大事な交付金を流用するなど筋として理解ができない」(総務省官僚)と冷ややかな声も出る。そうした構想が浮かんでは消えるほど、日本郵政グループを取り巻く関係者の思惑は錯綜している。

 2007年の郵政民営化から14年。経営の劣化や度重なる不祥事により、40万人組織の閉塞感はピークに達している。そうこうするうちに、ハガキと信書というドル箱収入の激減に不祥事の悪影響が重なり、郵便事業の業績悪化にも歯止めがかからなくなってしまった。

 もはや、日本郵政の「見直し」は必至の情勢になった。そして、郵便局ネットワークへの税金投入から、郵便事業の国営化・公社化まで、見直しの議論にタブーはない。