著者はハーバード大学とスタンフォード大学に計11年在籍し、世界的権威の2大科学誌『ネイチャー』『サイエンス』に論文が掲載されたスーパードクターだ。
帰国後、東京・錦糸町に「眼科 かじわらアイ・ケア・クリニック」を開設するやいなや、地元だけでなく、噂を聞きつけて全国各地から来院する患者が後を立たない。そんなカリスマ名医の初の著書『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』から、誤解だらけの目の常識と自宅で気軽にできる一生モノの目の健康法を科学的な事実に基づいてお伝えする。

スキーPhoto: Adobe Stock

夏場の海面よりも、
雪面は太陽光を反射する

Q
スキーに行った翌日、目が痛くて開かなくなったことがあります。

やっぱり雪の照り返しによる紫外線が目に悪かったのでしょうか。

A
理論的には、日光にあたれば皮膚も目の組織も日焼けします。でも、目はそもそも光を見る器官です。もちろん太陽光を直接見てはいけませんが、それほど紫外線に弱いわけではないんですよ。

ただ屋外にいると、上空から降り注ぐ光に加え、地表面で反射した紫外線も浴びます。

キラキラとまぶしそうに見える海面は、光の反射率がわずか10~20%なのに比べ、新雪は80%も反射します。アスファルトは反射率10%、草地などは10%以下ですから、どれほどスキー場の反射光が強烈なのかがわかるでしょう。

スキー場などで強い太陽光を浴びた目の角膜の表面が、傷ついて起こるのが「雪眼炎」、いわゆる「雪目」と呼ばれるものです。症状は、紫外線を浴びてから6~10時間後に現れますから、真夜中や翌朝になってから、ヒリヒリしたり激痛が走ったり、充血したりして目が開かなくなる状態になります。

紫外線で角膜の細胞のDNAが破壊されて細胞増殖ができなくなり、黒目の表面部分にある角膜が傷む「角膜びらん」が起きて、再生できなくなってしまい、痛みが出てくるのです。強い火花を見たあとにも起こることがあり、「電気性眼炎」とも呼ばれます。

Q
目が開かなったらかなり困りますが、どうすればいいのでしょう。

A
雪眼炎は、皮膚の日焼けと同様に、時間が経てば落ち着いてきます。その間、目が開かなかったり涙が止まらなかったりしたら、日常生活に支障をきたしますが、細胞が再生するまで治りませんし、即効薬もありません。

Q
細胞の再生をうながすためにビタミン剤やヒアルロン酸などで角膜保護をしたり、傷から細菌感染を起こしたりしないように抗生物質の予防投与をする場合もありますが、その後は安静にするしかありません。

強烈な紫外線を浴びると、
白内障になりやすくなる?

Q
そんな強烈な紫外線を浴びると、白内障になりやすいのではありませんか?

目のイラスト

A
白内障の最も大きなリスクは「加齢」です。もちろん、年齢を重ねる以外にも、さまざまなリスク要因があります。糖尿病などの慢性疾患、そして紫外線もそのうちの1つです。

でも、地球上の紫外線の強い地域、たとえば赤道直下の国々で白内障が極端に多いといった統計はありません。

私は、白内障に関して、紫外線はさほど気にしなくてもいいと考えます。とはいえ、スキー場などではまぶしいだけでなく、雪目にもなりますから、目のためにはサングラスやゴーグルをかけたほうがいいでしょう。

白内障よりも、確実に紫外線と関係があるといわれる病気があります。

それは「翼状片」という、白目の表面にある結膜が、黒目に向かって伸びてくる病気です。侵入してくる結膜が大きくなると乱視が強くなるため、とり除く手術が必要になります。

スキーに行って目が開かなくなったら
スキーをするときはサングラスやゴーグルで目を守る。

*目がヒリヒリしたり涙が止まらなくなって目が開きにくくなったりしたら眼科を受診