中島淳一氏新長官に就任した中島淳一氏は、金融庁初の理系出身のトップとして注目を浴びた Photo:PIXTA, kyodonews

7月8日、金融庁の幹部人事が発表された。氷見野良三長官は1年で退任となり、後任には中島淳一総合政策局長が昇格した。新たな幹部の顔触れを見て、早くも「次の長官」予想が始まる中で、トップ人事を巡る“ひずみ”も浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

「事情に詳しい人が見れば、何か察するところがあるでしょうね」――。新たな布陣を見たある金融庁幹部は、こんな言葉をこぼした。

 金融庁の幹部人事は、主要官庁の人事と同時に、例年7月に公表される。今年の“夏の風物詩”で金融界の耳目を集めたのは、昨年就任したばかりの氷見野良三長官が1年で退任し、中島淳一総合政策局長が後任に座ったことだ。

 東京大学工学部出身の中島氏は、金融庁初の理系長官となる。中島氏を知る金融庁OBは「理系出身の切れ者」と評価し、“頭脳派”ぶりを裏付けるように、金融の制度設計に携わってきた。

 金融庁での中島氏のキャリアは、一貫して金融政策の策定や庁内人事、国会対応を担う旧総務企画局だった。金融庁の組織再編後は、企画市場局長として「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」の浸透や、総合政策局長として金融行政のデジタル化やESG対応を進めてきた。

 こうした経歴故に、新長官の中島氏には、庁内随一の国際派と称された氷見野氏と同様の課題が突き付けられる。監督局のポストを担っておらず、金融の現場での実務経験が乏しいことだ。