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学生の頃から占いが得意なA子は、休みの日に占い師のバイトをしていたのが、腕を見込まれて平日も働くことになった。勤務先の会社に相談したところ、「週5日来られないなら正社員はダメ。契約社員なら」という回答。ところが契約社員は通勤手当が支払われない。社長に確認すると「就業規則にそう記載してある」と答えるのだが……。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
地方都市にあり、コールセンター業務を行っている。従業員数は正社員50名、契約社員およびパート社員(全員有期契約労働者)150名、合計200名。

<登場人物>
A子:30歳。正社員でオペレーター主任。現在週5日40時間のシフト制で勤務。会社の許可を得て休日に占い師の副業をしている。
B:40歳。占い館の女性オーナー。業界では有名人。
C:50歳。甲社の社長。
D子:甲社の契約社員でA子と同じチームで働いている。
E:甲社の顧問社労士。

副業で占い師に。しかし
「週4勤務なら契約社員に」と言われ……

 高校2年生の秋、自身の恋愛がきっかけでタロット占いにハマったA子。最初は自分と相手の相性や将来のことばかりを占っていたが、失恋後は友人たちのことも占うようになり、その的中率の高さで瞬く間に学校中の評判になった。毎日のように「私のことも占って」と知らない生徒からまで声をかけられるようになったA子は「プロのタロット占い師になろう」と心に決め、以来ずっと独学で勉強に励んだ。そして25歳の時、Bの直弟子になり、週2日、自分が休みの日にBが経営する占い館で、アルバイト占い師として働き腕を磨いてきた。

 2月上旬の日曜日、鑑定の仕事が終わりA子が帰宅しようとしていると、Bに呼び止められた。

「A子ちゃん、ちょっと話があるんだけど」
「何でしょうか?」
「半年前テレビに出てから出張や執筆の依頼が増えて、毎日ここに出勤するのが無理になったわ。それでね、火、水、木の週3日、A子ちゃんに占い館の責任者をやってもらいたいんだけど、どう?」

 A子は驚いたが、Bに一人前だと認めてもらったことがとてもうれしく、即座に引き受けた。