東京五輪発の菅政権退陣に現実味、市場が恐れる「2つの巨大リスク」とは?国際オリンピック委員会(IOC)関係者らを招いた「歓迎の夕べ」で歓談する菅義偉首相(左から2人目)とトーマス・バッハIOC会長(右端)=7月18日(Photo by Tokyo) Photo:JIJI

東京オリンピックがまもなく開催する。もともと「開催反対」の意見が多かったことを考えると、大会の運営に一つでもミスがあると菅政権は強い批判を浴びることになるだろう。菅政権の現在の支持率を考えると、あと一つか二つのミスや不運で退陣が十分起こり得ると考えておく必要がある。そのときに株式市場として心配しなければならない二つの大きなリスクとは?(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

「難しい」東京オリンピック
安全を願うも安心ではない開幕へ

 東京オリンピックの開幕が迫ってきた。少なくとも前月までの各種調査では、中止ないし延期を求める世論が優勢であったものの、今や、「反対しても、どうせやるのだろう」という現実的な諦めが広がりつつある。良くも悪くも、おとなしい国民だ。

 一方、「無観客」が決まったのが開会2週間前のことだった。大会の主な舞台となる東京都には、緊急事態宣言が発令されている。新型コロナウイルスの感染者が増加中で、病床使用率が上昇しており、医療体制も徐々に切迫しつつある。

 アスリートを含む来日関係者のコロナ陽性が既に複数件確認されている。加えて、海外から来日する関係者と一般国民が接触しないようにする「バブル方式」に「15分程度なら自由に外出できる」という謎のような穴が指摘されている。さらには、開会式の週になってから式に使われる曲の作曲者陣の1人に問題が生じて、同人の辞任と楽曲の差し替えが決まったりするなど、準備の状況は全く心許ない。

 コロナワクチンの接種は、やっと国民の約3割が1回目の接種を終えた程度の進行状況であり、「オリンピックには間に合わなかった」と言ってよかろう。オリンピックの開催が感染拡大を加速した場合、ワクチンの十分な普及が間に合うまで1〜2カ月の「危険な時期」が生じかねない。

 開催される以上、国民の誰もが「安全」であることを願うだろうが、多くの国民にとって少なくとも「安心」ではない状況で迎えるオリンピックだ。