日揮HDと伊藤忠に共通する「パーパス」経営は日本企業に浸透するかPhoto:123RF

2015年、世界の経営者の間に激震が走った。ハーバード大学ビジネススクールが出す世界経営者ランキングで、2014年まで1位だったAmazon社ジェフ・ベゾス氏が87位に転落したのだ。1位になったのは、ラース・レビアン・ソレンセン氏。日本ではあまり知られていないデンマークの製薬会社Novo NordiskのCEOだった。連載『ザ・グレートリセット!デロイト流「新」経営術』の#2は、世界を席巻する「パーパス」主導の企業変革を深読みする。(デロイト トーマツ グループ、モニター デロイト 藤井 剛、田中晴基)

パーパス主導のポートフォリオ変革
企業の存在目的は「儲けること」だけではない

 なぜこのような番狂わせが起きたのか。背景にはESG(E=環境、S=社会、G=企業統治)がある。2014年までは、在任期間中の株主総利回り(TSR)および時価総額の増加がランキング判定基準だった。「長期的に儲けられる企業・経営者こそが素晴らしい」というわけだ。しかし、2015年からESGパフォーマンスが20%の重みで追加された。「儲けられる企業=優良な企業」という判断基準が変わったと言って良い。

 この変化を最も捉えているのが「パーパス」である。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのCEOラリー・フィンク氏は、2018年1月に「A Sense of Purpose」と題された書簡をS&P上場500社の経営トップに対して送付し話題になった。