安いニッポン 売られる日本#20Photo:Andriy Onufriyenko/gettyimages

財界総理を輩出している化学業界。先端研究の粋である化学製品は、ハイテク時代に欠かせない黒子である。いまや日本の最重要産業の一つとなった化学業界には、給料面で大きな弱点があった。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#20では、大いなる黒子産業、化学の給料のリアルを伝える。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

財界総理を輩出するが…
化学業界の給料は世界に負けている

 日本経済団体連合会(経団連)は「財界総本山」と呼ばれ、経団連の会長は「財界総理」と称されている。財界総理は日本の経済界全てを代表する要職であり、このポストに就く経営者は、その時に日本経済を支える業界から選出されてきた。かつてなら鉄鋼、電機、自動車の3業界が財界総理の出身母体だった。

 それが近年、化学業界からの財界総理選出が続いている。

 現在、経団連会長を務めているのは、住友化学の十倉雅和会長だ。十倉氏以外にも2010年以降は、住友化学会長だった米倉弘昌氏、東レ会長だった榊原定征氏と、十倉氏の前任で日立製作所会長だった中西宏明氏以外は、いずれも化学関連企業の経営トップがなっている。

 それも当然ではある。数字を見ると、日本経済における化学業界の重要さは歴然としている。

 化学業界の付加価値額(生産額から原材料コストや税を除いた金額)は、日本のあらゆる製造業の中で約17%を占め、自動車(輸送用機械器具)業界の約18%にほぼ肩を並べている(出所=日本化学工業協会「グラフでみる日本の化学工業2020」)。

 そして化学製品には、まだまだ伸びしろがある。AI(人工知能)や自動運転に不可欠な先端半導体や、次世代通信規格5Gといったハイテク分野は、化学材料を抜きにしては成立しないからだ。化学業界の日本経済における重要性は、増す一方なのだ。

 では日本の化学メーカーは、世界のライバル企業と戦う上で、十分な給料を与えているか?グローバルなデータからは、大きな弱点が浮かび上がってきた。日本経済の「屋台骨」、化学業界の給料の大問題を次ページから解説する。

化学業界レーダーチャート