コロナ禍で皆さんの営業は、どのように変化しましたか?「直接面会できない」「商品・サービスを見せられない(伝えられない)」「相手先の会社や個人の雰囲気・空気がつかめない」「直接相手を訪ねていくことで示せていた誠意が伝わらない」など、これまでの方法ではうまくいかず、悩んでいた時期もあるでしょう。しかし、その反面、営業成績が落ちるどころか、伸ばしている人がいることも承知のはず。何が違うのでしょうか。その違いは、すでに7年読み継がれている本書『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』で明かされています。そして、オンライン営業のスキルを加えてパワーアップしたのが、『[新版]「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』。本書よりいつの時代もどんな業種でも結果を残す営業スキルを伝授します。

営業マンの武器は「口の巧さ」ではなく「純粋な動機」であるPhoto: Adobe Stock

ある経営者との面会が私の営業スタイルを変えた

「売るのではなく、買ってもらう」「営業とはお役に立つこと」。2つを実現するには、お客様に対して「お役立ちへの純粋な動機」を持つことです。私はある体験を通して、これをはっきりと感じることができました。

 とある中小企業の社長に、人材教育カリキュラムを紹介したときのことです。私はまず名刺交換をして、簡単な挨拶を済ませ、このような質問で切り出しました。

「社長、今日はお時間を取っていただき、ありがとうございます。ところで、なぜ、お時間を取っていただけたのでしょうか?」
「私のほうも教育については考えていますのでね」
「なるほど、そうなんですね。ところで、会社を設立して何年になりますか?」
「そうですね、もう20年になりますね」
「なるほど。なぜ、この会社をつくられたのですか?」
「実はですね……」

 よく話をしていただける方でした。ここから、いろいろ話が始まったのです。

「実は私は中学を卒業して集団就職で田舎から出てきたんです。住み込みで朝から晩までよく働かされました。よく怒られましてね。とにかく仕事を覚え、一人前になることが目標でした。数年経って、少しずつ仕事を覚えるようになって、多少余裕が出てきました。仕事も任されるようにもなりましたね。そして、いつかは自分でも独立して仕事してみたいなーという願望に似たものが出てきました。でも、そんなことは夢のまた夢です。そんな夢など振り切るように仕事をしました。

 その後、数年経ったときに今の女房と出会ったんです。この女房と付き合うようになりましてね。それでね、会っているときに何となくそんな話になったんですね。私は夢の夢だけどって言いながら、『独立なんかしたいけどね』って冗談のように言ったのです。そしたら、女房が『あんた、それやってみようよ。私協力するから』って言いだしてね。私もびっくりしたのですが、そう言われるものですから、しばらく間をおいて『じゃ、やってみるか』ってね。

 それから、その夢に向かって、二人で一生懸命お金をためてね。二人のデートのときなんかも、ほとんど使いませんでしたね。本当に随分節約しましたよ。そして、ついに独立の日が来たんです。5年かかりましたよ。事務所をかまえ、入口に会社の看板をかけたときは嬉しかったですね。今の女房に『ありがとう』ってお礼を言ったときに思わず涙が出ました。女房もね、『いいや、あんたが頑張ったからだよ。こちらこそ、ありがとう』と言ってくれましてね。そのときには二人で抱きあって、おいおいと声を出して泣きましたよ。

 そしてね。そのとき、思ったんです。そうなんだ。夢は見るものでなく、実現するものなんだってね。行動するものなんだってね」

 私はその話を聞いて、目頭が熱くなりました。

「それから、20年、いろいろありましたが、何とかやってきました。一緒に手伝ってくれる社員も入ってくれましてね。だからね、青木さん。私はね、いつも社員に言っているんです。私が独立の夢を持ってやってきたように、今の社員にも夢を持って仕事をしなさいってね。もし、独立したいと思うなら応援もするよってね。もちろん、ここを継いでもらう人が出てきてくれてもいいと思っているんです」

 私は、ますますこの社長の話に惹かれていきました。そして、この話をずっと聞いているうちに、私の心の中にある感覚が芽生えてきたのです。

 それは「この素晴らしい社長に自分も何とかお役に立ちたい!」という気持ちでした。そうです、これこそがこの人のためにお役に立ちたいという「純粋な動機」だったのです。