防護服防護具の着脱も訪問先によって異なり、訓練が必要だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの過去最大の感染拡大を受け、政府は重症化リスクの高い感染者に入院を限定する方針を示したようです。私は現在、神奈川県鎌倉市でコロナ患者さんに対する往診や入院依頼を行っていますが、看護師・薬剤師の協力や、在宅診療固有の経験やノウハウがなければ、開業医による自宅療養患者への対応は容易ではありません。(湘南おおふなクリニック院長 長谷川太郎)

鎌倉市の状況は「第4波」の神戸市に近い
5人を往診し、4人が入院へ

 私は神奈川県鎌倉市で「湘南おおふなクリニック」を開設し、現在約100人の患者さんを訪問診療で担当しています。市医師会からの要請で、今年の5月から地域療養の「神奈川モデル」事業(新型コロナウイルス感染症陽性者患者のうち悪化リスクのある患者について、医療機関や訪問看護ステーションが連携して、早期の医療介入を可能とする療養体制を整備する事業)の一員として往診や入院判断を輪番制で担当しています。

「神奈川モデル」の主役は訪問看護師です。地元の六つの訪問看護ステーションが連携して、電話による自宅療養者の健康観察を行い、体調悪化時、基礎疾患がある方、認知症の方の場合などに看護師がご自宅を訪問します。血液の酸素化が低下したり、高熱が持続する患者さんについては、看護師の求めに応じて医師がオンライン診療や訪問での診療を行います。医師は、ご自宅での診察、お薬の処方や入院の判断を行い、24時間常時自宅療養者への医療サポートを行います。

 全国同様に、鎌倉市内の感染状況も深刻です。市内の人口は約17万で、人口10万当たりの直近7日間の新規陽性者数が8月3日時点で97.7人であり、今年春の「第4波」で自宅療養中に死亡者が相次いだ神戸市の水準に日々近づいています。

 7月下旬から状況が急に悪化し、当番であった私は26日に症状が悪化した5人に対し訪問での診療を行いましたが、うち4人が呼吸状態の悪化が顕著であり、県入院調整本部へ依頼して入院となりました。

 また、最近特に多いと感じるのは、乳幼児や小児の感染です。保護者から乳幼児に、逆に小児から保護者といったように、家庭内感染が深刻です。保健所から依頼を受け当院で実施している訪問での病原体検査も、小児に対する事例が増加してきています。

 市内で拠点病院として入院患者を受け入れるのは、救急患者の受け入れを断らないことで有名な湘南鎌倉総合病院です。コロナ患者を最大180床受け入れる体制が、5日時点で50%程度が埋まっていると聞きます。ベッドだけではなくて、患者数の急増に対応するスタッフが必要ですので、実際にはフル稼働は容易ではありません。心筋梗塞、脳卒中、交通外傷など新型コロナウイルス感染症以外の救急にも必死で対応されています。

 7月末までは、入院依頼の受け入れがスムーズでしたが、8月になり少しずつ時間がかかるようになっています。