廃業急増!倒産危険度ランキング#13Photo:Assja/gettyimages

コロナ禍で苦境にもかかわらず、倒産件数は歴史的な低水準で推移する“異常事態”だ。一方で企業の休廃業は急増するなど、倒産予備軍が積み重なっている。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#13では、コロナ時代の倒産「5大新常識」に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

コロナ禍でも7月の倒産は半世紀ぶり低水準
倒産減の裏で急増する企業の休廃業

 倒産の常識が変わった。

 景気が悪化すれば企業の倒産件数は増える。そんな当たり前のような常識が、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う危機では通用しなくなっている。

 国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(2021年4月版)によれば、リーマンショック時の世界的な金融危機の際に、主要13カ国の倒産件数は約50%増えた。その他の景気後退局面でも、倒産は平時よりも10~20%増えることが通例だった。

 ところが、今回のコロナ禍で、主要13カ国の企業の倒産が約20%減っているというのだ。

 この傾向は日本でも同様だ。帝国データバンクによれば、20年の企業の倒産件数は7809件で、2000年以降で2番目の少なさだった。

 加えて足元では倒産件数がさらに減り、“歴史的”な低水準になっている。東京商工リサーチによれば、7月の倒産件数は476件。1966年7年の466件以来、7月としては55年ぶりの少なさだった。

 企業の倒産は雇用を破壊する。多くの従業員が路頭に迷えば、景気の悪化はさらに深刻化してしまう。こうした事態を避けるために、各国は緊急融資や補助金など企業の支援策を充実させ、コロナ危機への対処に奔走した。政府幹部も「倒産の少なさは支援策の成果だ」と胸を張る。

 しかし、倒産のプロたちは誰もこの状況を“正常”だとは思っていない。東商リサーチ情報部の増田和史課長は、「倒産の減少は、融資や補助金のおかげですぐに会社を畳む必要がなく、ほぼ休眠状態の会社が倒産件数として表面化していないだけだ」と指摘し、「倒産が減っている裏で、企業の休廃業・解散が増えている」と警戒する。

 事実、20年に休廃業・解散した企業の数は前年比14.6%増の4万9698社(下図参照)。東商リサーチが2000年に調査を開始して以降、最多を記録した。

 コロナ危機でも倒産が減少し、廃業が急増しているという異常事態。激変した倒産事情の“5大新常識”をぜひ押さえておこう。