日本企業が「ジョブ型」へ舵を切ることにより、キャリアの前提となるゲームのルールが変わりつつある。そのルールを知っているかどうかで、キャリアの戦い方が変わってくるのである。コーン・フェリーの加藤守和氏が執筆した、書籍『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』は、「ジョブ型」へ移行しようとする日本企業に共通する課題や、日本型雇用や労働慣行との兼ね合いなどを解き明かす。その上で、これからキャリアを構築しようとする20~30代のビジネスパーソンに向けて、個人が自立的なキャリアを構築していくための実践的な方策を提言する。

「ジョブ型」とテレワークの相性が良い理由Photo:photo AC

コロナ禍で生じた企業組織の「分断」

 現在、日本企業が「ジョブ型」へシフトしようとしている理由の一つは、「仕事の進め方」の変化です。

 今までの日本企業の人材マネジメントは「人」を中心にした人材マネジメントでした。仕事の割り振り(アサイメント)は、メンバーの個々の能力や負荷を考慮しながらマネジャーが決めていました。職場内では、上司とメンバーは報連相を緊密におこないながら、仕事の割り振りの変更や他メンバーへのサポート要請などの調整をきめ細やかにおこなっていました。

 しかし、コロナ禍で組織に物理的な分断が起こったことにより、テレワークと「人」基軸のマネジメントとの相性の悪さが露呈しました。報連相や、「人」に合わせた仕事の割り振りは、職場に物理的に集まり、上司が自然に職場内の状態を理解・把握できることで成り立っていました。

 メンバーの表情や声色、出勤・退勤時間、プライベートの充実度合いなど、さまざまな情報をもとに日本の職場では、空気を読んで、仕事の差配がおこなわれていたわけですが「分断」が生じていくことで、この日本独特の丁寧なマネジメントが上手く機能しなくなったのです。

 一方で、職務(ジョブ)を明確化する「ジョブ型」とテレワークの相性は良いと言えます。筆者も、コロナ禍の前から積極的にテレワークを推進している外資系のIT企業にインタビューをしたことがあります。その際に、人事部長が強調していた成功の秘訣は、人事の原則は職務であり、Pay for Jobが根付いていることです。マネジャーが職務(ジョブ)を明確に割り振り、職責を果たして成果を上げることが当たり前に根付いているので、どこで働いても構わない、となるのです。

 果たすべき職務やゴールが明確で、成果を重視する文化であれば、ある程度の仕事のカタマリで「任せる」ことでもスムーズに物事は進んでいきます。職場で仕事をしようが、在宅で仕事をしようが、判断の基準は成果であることには変わりがないため、テレワークと相性が良いのです。

 このように、すでに日本企業の「人」に合わせた「処遇」や「仕事の進め方」には無理が出てきており、コロナ禍によって、その無理は露わになりました。