今すぐ「手作業」をやめれば、エクセルのミスは激減し生産性は劇的に向上する

エクセル作業をしている人にとって、絶対に避けられない「ミス」。
・間違って隣のセルをコピペしていた!
・請求書を何枚も作っていたら、請求先の会社名を間違えた!
・データを別のシートへ移していて、作業をどこまでやったかわからなくなった!
などなど、エクセル仕事にやっかいなミスはつきもの。そのたびに、確認やダブルチェック、トリプルチェックが必要になる。これらは、ときに深刻な問題を引き起こしたり、業務効率を大きく落としたりしている。そんな問題の解決策の一つが「エクセルマクロ」の活用。マクロ本史上、もっとも簡単にエクセルマクロが学び実践できると話題になっているのが『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』という一冊。今回はこの本の著者であり、数々の企業で徹底的な業務改善を行い、驚くべき成果を出してきた寺澤伸洋さんに話を聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

「ミスをなくす」ことが効率化のカギ

――『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』はエクセルマクロを簡単に習得する本ですが、エクセルマクロを使うメリットは、どのあたりにあると寺澤さんは考えていますか。

寺澤伸洋(以下、寺澤):まずは本のタイトルとなっている通り、時間が圧倒的に短縮されるという部分です。「定期的に同じ作業をする」とか「一回の作業のあいだに、同じ操作を何度もする」という場面では、絶対にエクセルマクロを使ったほうが効率的です。

 それともうひとつ私が強く主張したいのは「ミスがなくなる」という部分です。

――エクセル作業ではたしかにミスが多いですもんね。

寺澤:たとえば、エクセルで請求書を作っている会社は多いと思います。もっと立派なシステムが入っている企業ならいいですが、実際にはエクセルを使って経理処理をしたり、請求書を作成したりしている会社が多いです。

 請求書のテンプレートが作ってあり、そこに「お客様名」「日付」「品名」「金額」などの情報を入力して、プリントアウトしたり、PDF化したりします。それを、先方に送ったり、どこかのファイルに保存したりしていると思うんです。

 入力するべき情報は、だいたい別シートにまとめてあります。お客様のリストや、見積書などですね。これらを逐一確認して、コピペしたり、直打ちしたりして、請求書のテンプレートを埋めていきます。

 請求書を一つだけ作って一ヵ所に送るならたいした問題ではありません。しかし、人や部署によっては、請求書を100枚作って、100ヵ所に送るなんて作業も当たり前にやっています。こうなると、ものすごく手間ですし、ミスの可能性も高まります。

 作業自体は単純ですが、だからこそ繰り返していると、頭がぼーっとしてきてほんとうにミスが起こりやすい。誰でも経験あると思います。それでいて、ミスが起こると重大な問題になる。

――請求書で相手を間違えたら、情報管理の問題にもなってきますよね。数字が違っていたら、大きなクレームになってしまうこともあり得ますね。

寺澤:そうです。そういったミスをなくすためにも、エクセルマクロは効果抜群なんです。

「別のシートにあるデータを、請求書のテンプレートのこの部分に貼り付けて、それをPDFファイル形式で保存する」とプログラミングしておけば、もともとのデータが間違っていない限り、コピペミスは絶対に起こりません。

 私自身も何度も経験がありますが、たくさん数字が並んでいるシートから、特定のセルを選んで別のシートにコピペすると、すごくミスが起こりやすい。たとえば、コピーするべきセルに「2059.2」という数字が入っていて、そのすぐ下に「2089.2」があると、どっちをコピーするべきか混乱してしまいます。

今すぐ「手作業」をやめれば、エクセルのミスは激減し生産性は劇的に向上する一度マクロを作っておけば、どこまでコピーしたか混乱することはなくなる

 昼食後の眠たい時間や疲れているときに作業をしていると、どこまでコピペしたのか見失ってしまう人も多いのではないでしょうか。

 また、ミスしたと気づけるのは、不幸中の幸いとも言えます。そもそも、ミスをしたかどうかもわからないことも多いからです。どこでミスが起きたのかを確認する作業に膨大な時間と手間がかかることもしょっちゅうあります。

 そもそも、人間がやっている限り、ミスを犯さないことは不可能です。

 でも、エクセルマクロの場合は「C117」にある数値を、別シートの「A3」へ入れる、という指示をプログラミングします。マクロを作る際にコピペ元とコピペ先の指示を誤らなければ、操作ミスが起こることはありません。これはエクセルマクロを使う大きなメリットだと思います。

 実際の現場では、重要な資料作成は細心の注意を払って、慎重にやっていると思います。でも、人間がやることに100%はありません。ダブルチェック、トリプルチェックをすることで、ミスの可能性を潰していくわけです。結果として、その工程が生産性を大きく落としてしまっているのです。