製造業の現場で働く外国人に、日本人はどう向き合うべきか?

とどまることのない、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、日本で働く外国人労働者にも多くの影響を与えている。特に工場の製造ラインに従事する者は解雇や雇い止めもあり、今後の就労状況が不透明な状況だ。一方で、企業側からすれば生産活動の停止は経営数字を悪化させ、外国人をはじめとした就業者の確保はコロナ禍でも継続した課題になっている。製造分野における人材派遣、人材紹介を行う株式会社テクノ・サービスの伊藤薫さん(CRM・グローバル部 ゼネラルマネジャー)に“外国人就労の現在”を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

コロナ禍でも、製造業の求人は復調傾向に転じた

 製造業*1 での外国籍の労働者派遣を行っている株式会社テクノ・サービス*2 。テレワークのできない製造業での仕事は新型コロナウイルス感染症拡大の影響がことさら大きいが、求人(雇用側のニーズ)と求職(就労希望者)は現在どのような状況だろうか。

*1 製造業とは、次の(1)(2)の両方の条件を備えている事業所をいう。(1)主として新製品の製造加工を行う事業所。(2)製造加工した新製品を主として卸売する事業所。(経済産業省ホームページから)
*2 人材総合サービスの株式会社スタッフサービス・ホールディングスの100%子会社。本社・東京都千代田区、代表取締役社長は阪本耕治。派遣スタッフとしての就業者数は2万0454人(うち、外国人806人)(2021年6月末時点)。

伊藤 今年(2021年)の6月半ばくらいから求人の数が復調傾向にあります。テクノ・サービスは、工場での労働をメインにした「製造派遣」が中心なので、求人増に合わせて、(工場での)生産量が戻ってきた実感があり、「働き手が欲しい」という企業さまが劇的に増えています。とともに、就職環境が改善されたことから弊社に登録いただく求職者は一時期と比べて減りました。これまでは、コロナの影響で工場の生産ラインが止まり、外国人・日本人を問わず、「仕事がなくなったので、新たな仕事を探しています」という方が多かったのですが、潮目が変わってきました。首都圏以上に、地方は人手不足感が強く、今後はコロナ次第ですが、製造現場は慢性的に人材不足ですから、外国人労働者を含めて雇用は増えていくでしょう。

 伊藤さんが統括する「グローバル・コーディネート・センター(以下、GCC)」は、外国籍の求職者・派遣スタッフに特化した専属サポート部署であり、10人の外国人社員と3人の日本人社員が在籍している。外国人社員は出身国もさまざまで、英語・ポルトガル語・タガログ語・中国語といった言語をそれぞれのスタッフが母国語とし、就業前後の派遣スタッフからのさまざまな問い合わせに応えている。長引くコロナ禍でも、それは変わっていないようだ。

伊藤 派遣スタッフである外国人からの電話での問い合わせや相談の数は、就業状況に比例して増えています。相談内容は、コロナ以前と変わらずに「労働慣習」や「労務管理」のことが多く、コロナの最初の頃は、特別休暇の取得や休業補償についてのものも多くありました。ワクチン接種については、「当社がサポートする必要があるかな?」と思っていましたが、行政や企業さまが多言語で情報発信していることもあって、問い合わせはそれほど多くありません。

製造業の現場で働く外国人に、日本人はどう向き合うべきか?

伊藤薫 Kaoru ITO
株式会社テクノ・サービス CRM・グローバル部 ゼネラルマネジャー

銀行で8年間、営業職を経験した後「より自由な環境で、勝負してみたい」とスタッフサービスへ転職。IT部門で約10年、オフィス部門で約10年営業として活躍。東北、神奈川、東京などのユニット長を経て2015年に製造分野の人材派遣・人材紹介を行うテクノ・サービスへ異動。2017年に外国籍人材派遣事業を立ち上げ、2018年からCRM・グローバル部の責任者。