「池袋暴走事故」で判決、90歳被告に実刑が濃厚な理由写真はイメージです Photo:PIXTA

東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走し母子2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(90)の判決公判が2日、東京地裁で開かれる。飯塚被告は乗用車のトラブルが原因だったとして無罪を主張しているが、検察側は7月15日の論告求刑公判で法定刑として最長の禁錮7年を求刑、結審した。弁護側の主張が認められれば無罪の可能性はあるが、有罪なら執行猶予のない実刑の可能性が濃厚だ。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

乾いた謝罪に
やるせない遺族

 起訴状によると、飯塚被告は19年4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋の都道でトヨタ・プリウスを運転中、ブレーキとアクセルを踏み間違えて赤信号の横断歩道に突っ込み、自転車に乗っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子さん(同3)を死亡させ、9人に重軽傷を負わせたとされる。

 初公判が開かれたのは20年10月8日。検察側冒頭陳述によると、プリウスは事故現場手前で歩道と車道を隔てる縁石に接触した後、100キロ近いスピードで約150メートル暴走。横断歩道2カ所で松永さん母子らを相次いではね飛ばし、ごみ収集車に衝突したはずみで3カ所目の横断歩道に突っ込み、そこでも歩行者をはね、信号待ちのトラックにぶつかりようやく止まった。

 飯塚被告は罪状認否で「心からおわび申し上げます」と謝罪したものの「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に異常が発生した」と主張し、弁護側は過失を全面的に否定した。