総裁選のカギとなる河野太郎氏が出馬する可能性は?総裁選のカギとなる河野太郎氏が出馬する可能性は? Photo by Teppei Hori

自民党が政権を奪還して以来、最低支持率を記録した菅内閣。8月26日、任期満了に伴う自民党総裁選は「9月17日告示、29日投開票」に決定した。東京オリンピック・パラリンピック後に衆議院を解散、その後に総裁選をもくろんでいた自民党幹部にとって、衆院選を後回しにすることは苦渋の決断となった。総裁選には岸田文雄前政調会長が立候補を正式に表明、高市早苗前総務相らも立候補に意欲を示す一方で、下村博文政調会長が立候補を断念するなど、自民党内は荒れている。果たして自民党の行方は? そして総裁選のカギとなる河野太郎行政・規制改革相の出馬は? ジャーナリスト・田原総一朗氏に見解を聞いた。 (聞き手/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

苦渋の決断で衆院選を後回しに
総裁選が「9月17日告示、29日投開票」に決定

田原総一朗田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。1960年に早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年、東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「城戸又一賞」受賞。早稲田大学特命教授を歴任(2017年3月まで)、現在は「大隈塾」塾頭を務める。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(藤井聡氏との共著、アスコム)、『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(冨山和彦氏との共著、KADOKAWA)など。 Photo by T.H.

――東京オリンピックが閉幕し、9月5日までパラリンピックが開催されています。田原さんはスポーツにご関心はありますか?

 1964年開催の東京オリンピックの時は、テレビ局の社員をしていて、バレーやマラソンなど相当、熱中して見ていたよ。今回は競技自体の放映はあまり見ていないけれど、ニュースでは見ているよ。

――今回の東京オリンピックは、コロナ禍における開催を巡って相当、波紋を呼びましたが、イベント自体は大きな混乱もなく、ほぼ無事に閉幕しました。一方で、国内の新型コロナウイルスは急速に感染拡大しています。4回目の緊急事態宣言を発出した7月12日に新たに確認された感染者数は1504人、東京都では502人でしたが、8月25日時点で2万4321人、東京都では4228人の感染が確認されています。

 東京オリンピック自体は、開会式の平均世帯視聴率は関東地区で56.4%、関西地区で49.6%(ビデオリサーチ)で、その後の競技も高視聴率を維持。蓋を開けてみれば多くの国民が関心を寄せた。閉幕後、米・バイデン大統領も東京オリンピックは成功したと評価した。

 しかし、東京オリンピックの開催で、菅さん(菅義偉首相)がもっとも期待していた内閣支持率の上昇はなく、むしろガクンと落ち込んでいる。NHKの調査では支持が29%、不支持が52%(8月7~9日に実施)、共同通信の調査では支持率は31%、不支持率は50%(8月14~16日に実施)、ANNの調査では支持が25%、不支持が48%(8月21、22日に実施)、毎日新聞の調査では支持率は26%、不支持率は66%(8月28日に実施)と、2020年9月の内閣発足後最低を更新、2012年に自民党が政権を奪還して以降、最低を記録した。

 7月12日の緊急事態宣言の再発出によって、2週間たてば新型コロナの感染拡大は落ち着くと政府はみていたが、落ち着くどころか東京を中心に爆発的に拡大が進んでいる。もはや歯止めが効かなくなっており、政府は打つ手を見いだせていない。頼みの綱はワクチンだけだ。

 新型コロナがここにきて猛威を振るっている理由として一般的に言われているのは、ひとつは感染力の強いデルタ株。そしてもうひとつは「人流」だ。緊急事態宣言を出しても人の流れが減っていない。国民が宣言に慣れてしまった。さらに、国民に都道府県間の移動の自粛を促しておきながら、一方で、世界中から国境を越えて人が集まり、国が主体となってスポーツの祭典が行われている。これでは国民の緊張感が緩むのは当然だろう。

 国民は緊急事態宣言にはもはや効果がないと考え、政府の対策を信用できなくなっている。政府は何とか人の流れを抑えようと、緊急事態宣言の発令を13都府県に拡大し、期限を9月12日までに延長した。政府の小出しの対策に国民が呆れ、人流は減らない、すると政府がまた対策を小出しする――。悪循環に陥ってしまっているのだ。

 菅さんは今、どうすべきか、頭を抱えている。病床数を思い切って一気に拡大しようと考えたが、なかなか病院側の理解を得ることができない。菅さんに近い人物は僕に「困った」と言っている。八方塞がりだ。

――8月25日、菅首相は自身の任期満了に伴う自民党総裁選を公選規程に従い9月下旬に実施し、衆院選を後回しにする意向を固め、二階俊博幹事長に伝え、翌26日に総裁選は「9月17日告示、29日投開票」に決定しました。

 菅さんとしては、東京オリンピック・パラリンピックを成功させた後に衆議院を解散して勝利、その後に総裁選で無投票再選を果たしたいと考えていただろう。しかし、この異常な支持率の低さの中で、「この先、菅内閣ではやっていけない」という意見が自民党内で強まっているため、順番を逆にせざるを得なかった。二階さんはとても苦しみ、迷ったはずだ。

――総裁選で複数の候補者が論戦を繰り広げれば注目が集まり、自民党のアピールができる。そうすればその後の衆院選も自民党に有利に進めることができると。

 本来は与党の支持率がこれほど下がれば、野党の支持率が上がるはずだが、逆に下がっている。さらに問題なのが、かつての自民党であれば、ここまで支持率が下がれば、「首相に代わってオレがやる」という人が必ず出てきた。