国税庁が調査のギアを上げた!脱税事業者の「逃げ回り」を封じる一手とは写真はイメージです Photo:PIXTA

国税庁は9月から始まる税務調査の最盛期を前に、以前から調査の障壁となっていた税務署の管轄区域の見直しを行った。「頭のいい富裕層」は、既に調査権限の及ばない海外に脱税手段を移しているが、そもそも海外取引をしていなければその手が使えない。そこで、海外手段が使えない人たちがやっていたのが逃げ回りだ。しかし、もう逃げ回りはできなくなりそうだ。(元国税査察官・税理士 上田二郎)

国税から逃げることはできない

 従来、税務調査ができるのは、法人または事業者の納税地の所轄国税局、または所轄税務署の職員に限定されており、これを悪用し、調査中に納税地の異動を繰り返すことによって調査忌避をする事例が散見されていた。

 筆者が特別調査部門(トクチョウ班)の統括官だった時代には、調査通知をすると移転して逃げる不届き者が少なからずいたため、「グローバルな経済社会に税務署の管轄区域はあまりに狭すぎる」といつも感じていた。

 このような調査忌避に対応するため、国税庁は国税通則法を改正して(令和3年7月から適用)逃げ回りを封じた。

 調査通知後にターゲットが納税地の異動をしても、異動前の納税地を所轄する国税局長または税務署長に調査を行使できる権限を与え、調査のチャンスが大きく広がったというわけだ。

 なぜ今、逃げ回りを封じる必要があったのか。そこには理由がある。