円Photo:PIXTA

海外投資家の期待が高まると
日本株買いで為替は「円高」か

 前回の寄稿(日本「ジリ貧」鮮明に、円の“弱さ”が1970年代前半と同等まで低下)において、円相場は実質的に歴史的な割安水準から抜け出すことができなくなりつつあり、このままだと日本はジリ貧になっていく可能性を指摘した。そうした中で、今回の自民党総裁選挙およびその後の総選挙は、日本がこのままジリ貧となっていくのか、それとも復活するかの試金石になるかもしれない。

 菅首相にとっては巡り合わせが不運だった面は否めない。新型コロナウイルス感染拡大が続く中での、東京五輪・パラリンピック開催。その後、すぐに自民党総裁選を行わなければならず、さらに1~2カ月後に衆議院議員の任期満了を迎えるという状況は、誰であっても対応が難しかったであろう。

 ほぼ全ての策が裏目に出て支持率が低下を続ける一方、感染拡大、五輪・パラリンピック開催で解散・総選挙に打って出ることもできず、結果的に45年ぶりの衆院議員任期満了をもって、内閣支持率が落ち込んだまま総選挙に突入せざるを得なくなってしまった。

 そこで自民党議員からすれば、自民党に対する支持率を起死回生で急上昇させられる総裁を必要としている。自民党内の派閥の力学に基づかない形で自民党総裁・首相が決まるという意味では、そのような期待が多少は持てるのかもしれない。

 筆者は、そんな次期自民党総裁・首相への期待が市場で高まると為替相場は円高になると考えている。逆に円安になれば、今度こそ懸念すべき「日本売り」が顕在化してきたと認識した方がよい。そのくらい、現在の円相場は実質的には歴史的な割安水準となっていて、正常な水準への調整機能が効かなくなり始めている。

 次期総裁・首相への期待が高まれば円高になると考える理由は、海外投資家による日本株買いが想定されるからだ。日本株が上がる際は円安となるのではないか、と考える方も多いかもしれないが、筆者は今回円高に傾く可能性の方が高いとみている。なぜだろうか。