マリー・アントワネットも悩まされた…汚物まみれだったベルサイユ宮殿の真実

「こんなに楽しい化学の本は初めて!」という感想が続々寄せられている話題の一冊『世界史は化学でできている』。朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞夕刊、読売新聞夕刊でも次々と紹介され、発売たちまち8万部を突破。『Newton9月号 特集 科学名著図鑑』では「科学の名著100冊」にも選出されたサイエンスエンターテインメントだ。
「世界史を化学の目線で紐解く」となぜこんなにもおもしろいのか。今回は、本書のなかでも特に人気の高い「ローマ水道」と「マリー・アントワネット時代の衛生事情」について、著者の左巻健男先生に詳しく掘り下げて聞いてみました。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

古代ローマの水道施設はすごい

――世界史は化学でできている』はタイトル通り「世界史を化学の側面から紐解く本」ですが、歴史を化学の目線から眺めていくと、どういったおもしろさがあるのでしょうか。

左巻健男(以下、左巻) 多くの人は「歴史的な事実」や「歴史的な人物」について事柄を勉強したり、物語を知ることで歴史のおもしろさを感じていると思います。もちろんそれもいいのですが、そこに「化学」の目線を入れてみると、違った風景が見えてきて、まったく違うおもしろさが浮かび上がってくるんです。

――たとえば、どういうことでしょうか。

左巻 みなさんもよく知っている通り、古代ローマには立派な水道施設がありました。そもそも人類は川や湖など、きれいな水がすぐに得られるところに住んでいるものですよね。そういう場所で文明が誕生するんです。

 その後、文明が進み都市が発達してくると、近くで得られる水では不十分になってくるので、きれいな水を多量に供給する施設、すなわち「上水道」が必要となってくる。「都市化」とは水道設備と深く関連しているわけです。

 そういう歴史を紐解いていくと、最初に大がかりな上水道を敷いたのが古代ローマ人。紀元前3世紀には数多くの上水道が建設されていて、数十キロメートルも離れたところまできれいな水を引いていました。

 主に地下水路を利用していましたが、場所によっては石材やレンガでアーチ状の水道橋を作っていますし、水の透明度を高めるための「ろ過池」まで設けていたくらいですから、かなり近代的な水道施設です。

マリー・アントワネットも悩まされた…汚物まみれだったベルサイユ宮殿の真実

 同時に下水道も整備され、汚物を水で洗い流すトイレもありました。古代ローマには公衆トイレも作られていて、1600個もの便器が一ヵ所から発掘されているくらいです。

――古代ローマの人はかなり清潔な水を使って都市生活を営んでいたんですね。

左巻 そうなんですよ。古代ローマ時代にはすでに大規模かつ、かなり豪華な公衆浴場がありました。体にオイルを塗って汚れを落とす生活をしていたこともわかっています。

 古代ローマ人は相当衛生的な暮らしをしていたわけです。それだけの技術、文明が古代ローマ時代に存在していたのに、それが歴史的に引き継がれたかといえば、そうではありません。