「仕事ができる人は、一文が短い」「一文を60字以内にすれば、書き手も読み手もラクになる」。そう話すのは、コピーライターとして30年以上活躍し続ける田口まこ氏だ。花王、ライオンなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラなどの化粧品を中心に、多数の広告コピーを手がけてきた。その田口氏が、伝わる・結果が出る文章をラクに書くコツを紹介したのが『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』。メール、チャット、企画書、営業・プレゼン資料、報告書など、さまざまな場面に生きる、シンプルだけど効果抜群の文章術とは? 今回は、本書の内容を一部抜粋して紹介する。(初出:2021年9月22日)

あなたは大丈夫?「仕事ができない人」のメールにある意外な共通点【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

読みやすい文章は「一文60字」以内

 あなたが、仕事で“文章”を書くときに気をつけていることはなんですか? 誤字脱字の確認やていねいな言葉遣い、「てにをは」を間違えないようにする。伝わる文章を書こうと、いろいろと気を使っていることでしょう。

 でも、文字数を気にしたことはありますか?

 あなたが今日書いたメールや企画書の、ワンセンテンスの文字数を数えてみてください。何文字でしょうか?

 もし、ワンセンテンス60字以上の文がダラダラと並んでいるなら、知らず知らずのうちに自分の評価を落としているかもしれません。「一文60字」という文字数は、読みやすさを左右する境界線だからです。

 たとえば、次の2つの文を読んでください。どちらも、よくあるビジネスでの一文です。

●今回の広告は、商品のヘビーユーザーとなり得るZ世代に向けて、彼らがついSNSで拡散したくなる仕掛けにより、商品の認知度を爆発的に高めるこれまでにないプロモーションとさせていただきました。(93字)

●返事が遅くなりまして大変申し訳ございませんが、営業部の方から既存顧客への配慮が足りないので修正した方が良いのではという意見がありまして、再度ご相談させていただきたく、また追ってご連絡さしあげます。(96字)

「読むの、めんどくさい」
「で、結局何が言いたいの?」

 そう思いませんでしたか?

 原因はただ1つ、「ワンセンテンスが長い」ということです。一文にたくさんのメッセージがてんこ盛りで、読んでも読んでも結論にたどりつかない。そんなダラダラと長い文は、読み手を疲れさせます。

ダラダラ長文は、仕事の結果・評価も悪くする

 これら2つの文は、1つめがワンセンテンス93字(句読点含む)。次が96字です。どちらも私が創作したものですが、決して珍しい内容ではないでしょう。

「長すぎて、読みたくない!」と投げ出したくなるような、読み手を疲弊させるメールや企画書、商品資料は身近にあふれています。あなたも、そんな長くわずらわしい文に出合ったことがあるでしょう。

 もしかすると、ふだん自分が長い文を書いていることに気づいた人もいるかもしれません。ダラダラ長文は、確実に仕事の評価を落とし、結果を遠ざけます。ワンセンテンスが長いだけで、仕事の評価も印象も悪くし、結果が出せないなんて実にもったいない話です。

書くのがしんどい……。それも一文が長いから

 また、文章を書くことが苦手で、メールを1つ書くだけで疲れてしまう。そんな苦労をしているのも、きっとワンセンテンスが長いことが原因です。長文は、読み手も書き手も疲弊させてしまいます。

 これからは、とにかく短く書くことだけを心がけてください。それだけで、書くのが嫌い、うまく書けない、伝わらない……そんな悩みから解放されます。

 試しに、先ほどの一文を、すべて60字以内にしてみましょう。

●今回の広告は、商品のヘビーユーザーとなり得るZ世代に向けたものです。(34字)彼らがついSNSで拡散したくなる仕掛けで、商品の認知度を爆発的に高めます。(37字)

●返事が遅くなり申し訳ありません。(16字)今回の企画ですが、営業部から既存顧客への配慮が足りないとの指摘がありました。(38字)お手数をおかけしますが、再度ご相談させてください。(25字)詳しいことが決まり次第、追って連絡します。(21字)

 ずいぶん読みやすくなりました。それぞれの内容もすっと頭に入ってきます。スッキリした文面からは、清々しく知的な印象も受けます。

 伝えたいことによっては、一文60字は短すぎると感じるかもしれません。でも、とにかくワンセンテンス60字以内を目指す。それだけであなたは、伝わる、評価される、結果が出る文章を、らくらく書けるようになります。

(本原稿は、田口まこ著『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』からの抜粋です)

田口まこ(たぐち・まこ)
コピーライター
京都府出身。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)美学美術史学科卒業後、一般企業を経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社、コピーライターとなる。大塚製薬「ポカリスエットステビア」「カロリーメイト」などを担当し、「ジャワティ」の雑誌シリーズ広告で、コピーライターの登竜門「東京コピーライターズクラブ新人賞」受賞。その後フリーランスとなり、女性向けの商品広告を中心に活動。ライオン、花王、P&Gなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラ、ランコム、フローフシ、ロート、ファンケルなどの化粧品のコピーを多数手がけ、現在も第一線で活躍中。コピーライター歴は30年以上。著書に『短いは正義』『伝わるのは1行。』(かんき出版)がある。東京コピーライターズクラブ会員。