「サステナビリティ」という言葉がバズワードになって久しいが、「できることなら何もしたくない」とさめた目で見ている人は多いのではないだろうか。
ゴールドマン・サックス証券でSDGsやサステナビリティの啓発活動をしている清水大吾氏は、「持続可能な利益とは、社会に認められた利益のこと」だと指摘する。「社会に認められない利益は、将来のどこかの時点で社会から拒絶されてしまう」と警鐘を鳴らすが、これはどういうことか。
2021年3月19日に大好評のうちに終わったゴールドマン・サックス証券主催のセミナー「三位一体の経営で、失われた30年を取り戻す」の内容を特別に公開する。(構成:上村晃大)

企業は「サステナビリティ」とどう向き合うべきか清水大吾(しみず・だいご)
ゴールドマン・サックス証券株式会社 株式営業本部業務推進部長 SDGs/ESG担当
2001年、京都大学大学院修了後、日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)入社。2007年ゴールドマン・サックス証券入社。2016年から現職。

なぜ日米で株価に
10倍の開きがあるのか?

清水大吾(以下、清水) 本日のセミナーのタイトルは「三位一体の経営で、失われた30年を取り戻す」です。まず、この「三位一体の経営」という言葉ですが、これは経営者、従業員と株主、この三者が一体となった経営という意味です。

 これまで日本においては、経営者と従業員の二人三脚で成長を遂げてきたという実績があろうかと思います。本日は今後の社会動向を鑑みまして、株主とどう向き合っていくべきなのかという話をできればと思っております。

 セミナータイトルの中には「失われた30年を取り戻す」というなかなか壮大なテーマが入っております。以下のデータを見ていただきますと、2021年の2月から3月にかけて、30年ぶりに日経平均株価が3万円を少し超える局面がありました(図表1)。

企業は「サステナビリティ」とどう向き合うべきか図表1

 やっと30年前の株価水準に戻ってきたということで、メディアなどでだいぶ騒がれておりますが、本当にそんなに手放しで喜んで良いのでしょうか。

 というのも、こちら(図表2)を見てください。オレンジの線がアメリカのダウ平均株価で、下の青い線が日経平均株価です。残念ながら日経平均株価は、上がっているのか下がっているのかよくわかりません。

企業は「サステナビリティ」とどう向き合うべきか図表2

 もちろん、一概にアメリカの経営が良いと言うつもりはありませんが、とはいえ、我々が資本主義社会で生きている以上、企業の目的は企業価値の向上のはずです。どんな理由があったとしても株価に10倍の差があるというのは、日本の企業経営のどこかに大きな問題があるのではないかということを、我々は考えていかなければいけないように思います。

 誠に勝手ながら、私は2021年度の重要テーマとして「リアリズム」を掲げております。このリアリズムを失わないように、現実をちゃんと見据えながら是々非々で改善をしていくことが、今、我々に求められていることなのではないでしょうか。